Letter from CAIRC
1997.12 Vol.1 No.2

集合住宅(アパート・マンション)でペットと快適に暮らすためには
(後編)

今号は前回に引き続き、11月8日(土)に、東京都板橋区高島平の区民館で開催されましたセミナー「集合住宅でペットと暮らす方法」(主催:(社)東京都動物保護管理協会、後援:「コンパニオンアニマル リサーチ」、集合住宅における動物飼育を考える協議会、板橋区獣医師会)についてご案内します。前回は東京大学大学院で動物行動学を研究されている工(たくみ)亜紀先生の講演の前半部分「犬の問題行動とその防ぎ方について」を中心にご紹介いたしましたが、今回は後半部分「集合住宅での飼育とストレスの防ぎ方」の要旨をご紹介するとともに、セミナー終了後、参加者を対象に行われましたアンケート調査の結果についてご紹介し、集合住宅での快適なペット飼育の方法と現状について考えます。

集合住宅での飼育とストレスの防ぎ方〜犬のニーズ、猫のニーズを知る
東京大学大学院農学生命科学研究科 農学特定研究員 工亜紀先生
(獣医外科所属)

今回は、集合住宅での飼育で問題になりやすい、コンパニオンアニマルのストレスの問題について考えてみましょう。私たちが住んでいる日本では、住宅も密集しており、動物に広いスペースは与えられません。しかし、人でも狭いのだから犬猫もそれで我慢しなさいという考え方よりも、限られたスペースであっても、犬なら犬、猫なら猫本来の行動ニーズを満たす環境を提供することの方が重要です。

犬の場合、集団性の動物なので、まず、飼い主に注意関心を向けて欲しい、かまってもらいたいという欲求が、ニーズのかなり上にあります。しかし、実際には、家が留守がちだったり運動に行く時間が限られているなど飼い主と十分に接触出来ない場合もあり、このような場合は注意が必要です。また、犬は嗅覚が発達しているため、外のにおいを嗅いでその感覚を楽しむことが、刺激として非常に大切です。ですから、小型犬で、運動量は室内で十分だとしても、外に散歩に出すことは必要です。行動のニーズが満たされない場合、無駄吠えや、自分の体を舐めたり噛んだりして怪我をするなど、ストレスが原因の行動が現れます。

猫は、もともと単独行動の動物なので、人間に関心を向けてもらうことは、ニーズとして犬ほど高くありません。一番高いニーズは、狩猟本能を満たすことです。家で飼われている猫は、自然には狩猟本能を満足させる機会があまりないので、物を動かして遊ばせるなど積極的に遊ばせることが必要です。また、高いところに上りたい、爪を研ぎたいという欲求もあります。猫は犬よりもかなり狭いスペースで満足できる動物です。しかも、椅子などを置くと、登る場所が出来、スペース的には倍になります。猫の場合も、ストレスがあると、激しく毛繕いをして毛が抜け落ちたり、自分の体を傷つけてしまうことがあります。猫は群れの動物に比べてコミュニケーション能力が発達していないので、感情表現は犬ほどは豊かではありませんが、行動の欲求は持っています。そういう欲求を推し量り、満たしてやることが、スペースに限りがある私たちがコンパニオンアニマルに果たしてやれる役割なのではないでしょうか。


集合住宅でコンパニオンアニマルとともに過ごしていくために
コンパニオンアニマル リサーチ

セミナー終了後、主催者の(社)東京都動物保護管理協会により、出席者を対象にアンケートがおこなわれ、「集合住宅でのペット飼育」について意見を伺いました。ここにその概要をお伝えします。

まず、今回のセミナー参加者の住居の形態ですが、集合住宅が23名、戸建住宅が14名(回答数37)で、現在居住の集合住宅で動物飼育が禁止のところが12件、容認が11件、禁止だが黙認が7件、現在飼育している動物一代限り容認が3件(回答数33)となっています。

セミナーの参加動機としては、飼い犬をきちんとしつけたい、集合住宅で多頭飼育しており近隣から苦情があるので解決策を得たい、集合住宅でペット飼育の会を作っており管理組合や他の居住者からより多くの理解を得たい、マンション管理会社の社員だがペット飼育のルール作りを検討しているため参考にしたいなど、このテーマに日常的に大きく係っている方が多いことが目立ちました。

また、集合住宅での動物飼育については、今後可能になった方が良いと考える人が28名で、可能にならない方が良いと考える人の3名を大きく上回りました。理由としてはそれぞれ以下のことが挙げられました。

賛成意見としては、核家族化、少子化、高齢化が進んでいるため、家庭内での心の触れ合いの促進や、コミュニケーションが希薄になりがちな集合住宅コミュニティでのコミュニケーション・ツールとしてペットは必要だと思う。また、都市部では集合住宅が普通の住環境となってきており、ペットを飼育する権利という基本的人権の意味からも、そこで飼育出来るノウハウを何とか考えて行くべきなのではないか。また、家族の病気治療のために、医師の勧めで集合住宅で犬を飼っている方もおり、動物の持つこのような役割についても社会的にもっと注目されるべきだとの意見がありました。

反対意見としては、集合住宅で飼育するには現状、しつけやモラルに欠ける飼い主が多く、トラブルの原因となる。動物の嫌いな人との共存策をまず考えるべき、との意見が出されました。

以上のように、「集合住宅でのペット飼育」問題は、飼う権利、迷惑を受けない権利など居住者の基本的な権利に係る問題であり、都市部での地域コミュニティの形成促進効果や、社会変化に応じた自治体の対応なども含め、多くの人が関心を持って考えて行かねばなりません。そのためにも、コンパニオンアニマルとともに生活している人、これから生活したいと考えている人たちが責任ある行動を取ることが重要だと考えます。
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