Letter from CAIRC
1998. 1 Vol.2 No.1

人とコンパニオンアニマルが共生できる街づくりとは
〜集合住宅(アパート、マンション)での動物飼育は認可の傾向に〜

ペットは人が一方的に可愛がる相手ではなく、私達と共に暮らす仲間、コンパニオンアニマルとして考えられるようになってきています。中でも都市部での人とコンパニオンアニマルとの共生のあり方が見直されています。特に、都市部の住宅の過半数を占める集合住宅での動物飼育は我々のライフスタイルに関わってくる大きな問題です。

今号では、人とコンパニオンアニマルが共生できる街づくりについて考えます。


兵庫県と神戸市が日本初の動物飼育可の公営賃貸集合住宅を建設
神戸市ではいよいよ2月から、入居開始


集合住宅が都市部での通常の住居形態になるのに伴い、動物飼育についての行政の方針も柔軟に変化してきています。東京都衛生局は平成6年に「集合住宅における動物飼養モデル規定」を作成し、集合住宅での動物飼育について管理組合で規定を設けるよう奨励しました。また、建設省は平成9年に14年ぶりに「中高層共同住宅管理規約」を改正し、それまであいまいだった集合住宅での犬猫等のペット飼育に関する規定は、規約で定める事項であることを明記しました。(第18条関係(使用規則)のコメント2)

公営集合住宅においても、今まで基本的に禁止されていた動物飼育が認められるようになりつつあります。兵庫県では、昨年、自治体として初めてペット飼育可の賃貸集合住宅の建設を始めました。高齢化・核家族化が進展する中で、犬・猫などのペットが人の生活を精神的に支える存在となり、阪神・淡路大震災の被災者の中にもペットを心の支えとしている方が多いことから、県営住宅ペット共生モデル事業として取り組みを始めたものです。県営災害復興住宅「鹿の子台南」(神戸市北区、2棟55戸)、「白川台」(神戸市須磨区、2棟44戸)の2団地、計99戸を、ペット用潜り戸などの設備を備えたペット共生住宅として現在建設中で、4月中旬に入居開始の予定です。自治会内にはペット管理委員会と飼育規定を設け、適正飼養の自主管理を行ないます。

神戸市でも、ペット飼育可の災害復興賃貸住宅を現在建設中です。神戸市がユニークなのは、建設決定に先立ち、専門家、仮設住宅の自治会長等で構成される「ペット問題研究会」を設置し、検討を重ねてきたことです。「阪神・淡路大震災の被災者の多くの方がペットを精神的な支えとして家族同様に暮らしており、苦労を共にしたペットと一緒に恒久住宅に住みたいという強い要望がありました。ただ、集合住宅では従来ペットに関するトラブルも少なくなく、飼育は禁止していました。そのため、専門家等による研究会を組織し、検討にあたりました。」と神戸市住宅局住宅部計画課の山本朋廣課長は話しています。

昨年6月の研究会の報告を受けて神戸市は、「鹿の子台南住宅」(神戸市北区、1棟35戸)、「ベルデ玉津」(神戸市西区、1棟34戸)の計69戸の災害公営住宅を、動物飼育が可能な「モデル住宅」として建設中です。特別なペット仕様設備は設けませんが、住人による「飼い主の会」を組織し、繁殖制限の奨励、飼育出来るペットの種類と数などについての細かな会則を定めることにしています。入居開始予定はそれぞれ2月3日、3月下旬で、日本初のペット飼育可の公営賃貸集合住宅となります。現在、(社)神戸市獣医師会等の協力により、ペットの飼い方の講習会、しつけ教室などの開催を予定しています。


「阪神・淡路大震災犠牲動物慰霊祭」、
「動物とともに暮らすまちづくりシンポジウム」を2月1日に神戸で開催


都市での人とコンパニオンアニマルとの共生について考える具体的な動きとして、「阪神・淡路大震災犠牲動物慰霊祭」、「動物とともに暮らすまちづくりシンポジウム」が2月1日(日)に神戸市の王子動物園 動物園ホールで開催されます。主催は阪神・淡路大震災動物追悼記念事業実行委員会で、震災時に積極的に動物救援活動を行った団体を中心に、兵庫県、神戸市、(社)兵庫県獣医師会、(社)神戸市獣医師会、(社)日本動物福祉協会阪神支部、集合住宅における動物飼育を考える協議会で構成されています。当日は午前10時30分から動物慰霊祭、午後1時からシンポジウムが開催され、パネラーによる講演と県民2人を交えた総合討論が行われます。3人のパネラーと講演テーマは、中川志郎氏(茨城県自然博物館長・元上野動物園園長)「都市と動物〜都市は動物とどのようにかかわっているか〜」、吉田真澄氏(同志社大学教授)「ペットの法律から見た日本」、林良博氏(東京大学農学部教授)「都市における犬の問題行動」となっています。

記念事業実行委員会副委員長で(社)神戸市獣医師会会長の旗谷昌彦氏は今回の開催についてこう話しています。「震災から3年が経ち、人の追悼記念式典は毎年多く行われていますが、動物の慰霊祭は一切行われていません。震災で犠牲になった動物たちへの慰霊とともに、家族の一員であった動物を亡くした飼い主の気持ちを少しでも癒すために動物慰霊祭を行います。また、私は獣医師として被災動物の救援活動を行なうなかで、人と動物との共生を通して人が動物に助けられている例を数多く見てきました。昨今、集合住宅での動物飼育が問題になっていますが、今回、兵庫県と神戸市が自治体として初めて試みる、動物とともに暮らす事の出来る集合住宅の建設を機に、どうすれば人と動物が共生出来るのかを真剣に考え、社会にアピールしていく事を目的にシンポジウムを開催したいと思います。」 また、シンポジウムのパネラーの一人で「ヒトと動物の関係学会」会長の東京大学農学部教授 林良博氏はこう述べます。「阪神・淡路大震災の直後に組織された『兵庫県南部地震動物救援本部』は行政と獣医師会、動物愛護団体などが力を合わせて動物の救援活動にあたり、全国的な反響を呼びました。その活動は日本での動物への理解を示す大きな出来事であったと思います。私たちの『ヒトと動物の関係学会』も震災直後の4月に設立され、半年後の10月に神戸で『阪神・淡路大震災シンポジウム』を開催するなど微力ながら動物救援活動のお手伝いを続けてきました。今回のシンポジウムは、震災後3年の節目を迎えた今、多くの人たちが人と動物との共生についてどう考えているかを探る、良い機会だと思います。」


「コンパニオンアニマル リサーチ」が集合住宅での犬・猫との暮らし方の
テキストブックを発行、2月1日から配布開始

では、都市の住居の過半数を占める集合住宅で、犬や猫などのコンパニオンアニマルと快適に暮らしていくには、どのようにすればよいのでしょうか。このような多くの方の疑問に答えるため、「コンパニオンアニマル リサーチ」は集合住宅で犬や猫と暮らすためのテキストブック『集合住宅で犬や猫と暮らす〜コンパニオンアニマルとともに〜』(非売品、無料)を2月1日に発行いたします。テキストブックはA4版、2色刷り、40ページで(社)日本動物保護管理協会が監修しています。「集合住宅とペット」、「猫との生活」、「犬との生活」、「集合住宅でペットと暮らすためのルール」の4章で構成され、集合住宅に適したペットの種類やしつけ、避妊・去勢、飼育のルール作りなどについて集合住宅で初めて犬や猫を飼う方にもわかりやすく説明しています。

2月1日の神戸シンポジウムでの参加者への無料配布を皮切りに、集合住宅でのペットの飼い方セミナーやしつけ教室などで、積極的に配布を行っていく予定です。

「コンパニオンアニマル リサーチ」は、今回のテキストブック発行が集合住宅における人とコンパニオンアニマルとの快適な生活の構築に少しでも役立つことを願っております。

私達はこれからも、人とペットとのよりよい関係の構築、都市生活の中でコンパニオンアニマルが住みやすい環境作りをめざし、多くの活動を行っていきたいと考えています。
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