Letter from CAIRC
1998.5 Vol.2 No.3

集合住宅での犬猫飼育へ高まる関心
〜建設・不動産、管理組合、行政などの取り組みが広がる〜

テキストブック
『集合住宅で犬や猫と暮らす〜コンパニオンアニマルとともに』
申し込み殺到で、すでに6000部を配布


『コンパニオンアニマル リサーチ』では、今年2月1日、集合住宅での犬・猫との暮らし方のテキストブック『集合住宅で犬や猫と暮らす〜コンパニオンアニマルとともに〜』(希望者に配布)を発行しました。「動物とともに暮らすまちづくり」をテーマに神戸で行われたシンポジウム(2月1日)での配布を皮切りに、現在までに2577件、約6000部を配布。新聞や雑誌などでも取り上げられました。98年2月19日付朝日新聞家庭欄ではペットの飼い主と地域の人々とのいい関係をめざすという内容で「ペットの飼い主しつけます」、98年2月10日付読売新聞大阪本社版では動物を飼える公営集合住宅の紹介を中心に「ペットOK集合住宅」、そして、リクルート『週刊住宅情報』4月29日号では「家族の一員! ペットと暮らせるマンション」などで紹介されています。

配布先の内訳は、マンション管理組合104件、マンション管理会社475件、建設・不動産会社306件、行政151件、動物関連組織および獣医師107件、一般申し込み1371件の他、『コンパニオンアニマル リサーチ』ニュースレター配布先404件、その他43件となっています(4月30日現在)。監修を担当した(社)日本動物保護管理協会山口安夫事務局長は「人間と動物の共生のあり方への関心が高くなってきたことが、こんなに申し込みがあった理由でしょうね。実際、集合住宅での動物飼育については、さまざまな問題を含んでいますから、テキストブックを読むことで正しい知識をもっていただけたらと思います」と言います。今回は、テキストブックを配布した団体にお話を伺い、集合住宅での動物飼育の現状と今後のあり方について考えてみたいと思います。


不動産会社の77%が
ペット可マンションに対応予定 〜リクルート調べ〜


「これまでペットと暮らせるマンションということで特集を組んだことは一度もありませんでした。読者からのニーズは以前からあったんですが、それに対応する物件が非常に少なかったんです。でも、昨秋ぐらいから大きく変わってきていますね。毎年、当社で行っている不動産会社向けアンケートの中で、今後のペット可マンション対応予定についての質問をしています。昨年は対応予定があると答えた企業が20%しかなかったんですが、今年は77%。違いは明らかですよね」というのは、週刊住宅情報(リクルート発行)副編集長明石尚美さん。94年、金利の3%突入と地価の安定でマンションや住宅の供給状況は活気づき始めましたが、現在はやや過当競争気味。そのうえ、多様化している消費者ニーズに応えるため、それぞれの不動産会社が独自の付加価値をアピールし、商品展開をすすめています。ペット可マンションは、ガーデニングが出来るマンション、収納に気を配ったマンションと同様、不動産会社の姿勢の変化の現れという面が大きいといいます。

ペット可マンションの特集記事を取り上げた週刊住宅情報4月29日号では6ページの特集記事のうち、物件情報も2ページに渡って掲載されています。

「問い合わせも続いていますし、こんな情報を待っていたという読者からの電話もいただきました」と語るのは、この記事を取材した編集部の猪狩裕喜子さん。

「集合住宅では細かい規則や、それを順守することも重要。それに、入居者同士でコミュニケーションをとっていくことが大切なんです」(猪狩さん)


公営初のペット可集合住宅では
動物専門家のサポート体制を検討中


行政の取り組みも非常に細やかなものになってきています。公営賃貸住宅で初めて動物飼育が認められた兵庫県営災害復興住宅計99戸は、4月から入居が始まりました。

「現在、管理組合を動物飼育の面からサポートする体制を作ろうと検討しています。たとえば、犬が鳴いてうるさいという苦情が出たとき、その原因を究明せず、しつけの問題にしがちです。でも、病気や建物の問題かもしれない…。管理組合に動物の専門家がいなければ、どうしていいのかわからず、ペットを閉め出すことになりかねない。ですから、ドッグトレーナー、獣医師会、動物福祉協会、行政などが中心となって支援体制を作っていく予定です」と、兵庫県生活衛生課菊地豊彦動物衛生係長。5月中旬に行われる説明会ではコンパニオンアニマル リサーチのテキストブックを配布することになっています。

また、このテキストブックを使い、勉強会を行う地方自治体も出てきました。

「今、地域住民向けのしつけ教室を開催予定です。だから、私たち指導する側がしつけについて、もっと学ぶ必要性があると思い、3月に勉強会を行いました」(福島県県北保健所衛生課食品衛生係・副主任獣医技師関根泰志さん)


住民間の交流で差が出る
集合住宅の現状


実際の集合住宅ではどうなのでしょうか? 今回は飼育者たちで組織する飼育者の会をもつ先駆的な2つの集合住宅の現状を伺いました。まず、最初に紹介するのは東京・広尾にある広尾ガーデンヒルズです。広尾は外国大使館などが集まるエリアで、約1200世帯が暮らす広尾ガーデンヒルズは、12年前に分譲がスタート。当初から動物を飼うことが規約で認可されていた珍しいケースです。そのペット委員長を務める酒井寛さんはペット可集合住宅の問題をこう語ります。

「犬のしつけの面ではまだまだ問題があります。だから、テキストブックを会員たちに読んでもらいたくて配布することにしたんです。最近も敷地内に犬の尿の跡があるということで業者の方に掃除に来てもらったばかり。もちろん、外部から犬を連れてくる人もいるんですが、ちゃんと犬をしつけていなかったり、買い物をするときに、ついでに犬の散歩もさせようとして店の前に犬をつないで迷惑をかけたり…。それに、隣近所とあまり付き合わない傾向があるのも問題をこじれさせる原因の一つです。隣りとは全然ライフスタイルが違う。付き合いもない。ちゃんとコミュニケーションが出来ている隣人同士ではないので、どうしてもお互いの主張のすれ違いになってしまうんです…。まずは、しつけ教室やペットの会報を通して、飼い主の啓蒙をしていかなきゃいけないと思っています」

一方、東京でも下町である千住の集合住宅グリーンコーポ千寿では少し様子が違います。

「大きなトラブルはないですね。うちの場合、年会費が1万2000円で、それ以外に預託金として1頭につき5万円を管理組合に払うんです。ちょっと高すぎると思いましたが、苦情の処理や掃除の費用としてはそのくらい必要ですし、高い預託金を払うことで飼い主の責任を意識する面もあるのかもしれません。今は管理組合の指揮下に入っているので、ペットの会に予算をもらい、しつけ教室などを開いています。また、マンションの中に自治会もあり、住民でお祭りに参加することもあるんです。隣近所の付き合いが密接だということが功を奏しているようです」(グリーンコーポ千寿 ペット会会長飯田守さん)

日本では人間と動物の共生について、まだ共通の基盤=フレームワークができていません。都市部、それも集合住宅でペットを飼う歴史そのものが浅いわけです。みんなが気持ちよく暮らすために、飼い主の方たちに正しい動物観をもってもらう必要があります。紹介した2つの集合住宅のように、まずは飼育者の会を作り、一つひとつの問題を明確にしていくことが動物と人間が共生する社会をつくる第一歩だと『コンパニオンアニマルリサーチ』は考えています。
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