Letter from CAIRC
1998.7 Vol.2 No.5

「第8回人と動物の関係に関する国際会議」プラハ大会、
開催迫る!

IAHAIOプラハ会議のテーマは「変わりつつある動物の社会的役割」

今年9月10〜12日、『第8回 人と動物の関係に関する国際会議』がチェコ共和国のプラハで開催されます。さまざまな分野の研究者、各国の人と動物の関係学分野に携わる組織関係者、マスコミなど世界25カ国、800人以上の参加が予定される画期的な国際会議です。本会議では、「変わりつつある動物の社会的役割」をテーマとして掲げ、動物と人との関係の歴史、文化、人口統計、公衆衛生、獣医学、治療、心理学、社会学、および動物行動学といった見地からの論文発表が行われます。また、このテーマに沿って、過去・現在・未来、とくに、今後の変化に対する障壁や課題について話し合い、それぞれに情報交換を行うことになります。

この国際会議は、人と動物の関係学分野に関心を寄せる各国・国内協会や関連団体で組織するIAHAIO(International Association of Human-Animal Interaction Organizations・人間と動物の関係に関する団体の国際組織)が行うもので、1977年、ロンドンで開催されたのを皮切りに、フィラデルフィア、ウイーン、ボストン、モナコなどでも開かれてきました。今回は、地元チェコのペット関連団体AOVZとフランスのコンパニオンアニマル情報研究組織AFIRACがホスト役を務めます。

IAHAIOは、人と動物の関係学分野に関心を寄せる各国からの強いニーズによって1990年に設立された国際的な組織で、世界中から21団体、日本でも(社)日本動物病院福祉協会が加盟しています。その役割は、加盟各国、各団体の調整役、牽引役を務めることで、事務局は米国ワシントン州のデルタ協会に置かれています。今、「人と動物の関係学」分野は、世界的に見ても関心、支援、そしてニーズが高まってきています。この分野の発展を図るためにもIAHAIOの役割はいよいよ重要になっているのです。


大きな可能性を秘めた「人と動物の関係学」分野

「人と動物の関係学」分野は日本でもかなり定着してきました。94年には『ヒトと動物の関係学会』(会長 林良博東京大学教授)が発足し、97年には麻布大学で増井光子教授による『人と動物の関係学』研究室が誕生。この分野は今、徐々に裾野が広がりつつあるといってもいいでしょう。

昨今、ペットブームと言われていますが、子供が少なく、お年寄りが多い少子高齢化社会である現代の日本において、犬や猫は兄弟の少ない子供や、社会とのつながりが希薄になりがちなお年寄りにとって家族の一員であり、心の支えとなることが少なくありません。そして、子供やお年寄りばかりでなく、孤立しがちな現代人にとって、犬や猫はセラピストの役割を担うことになるはずです。このような背景も「人と動物の関係学」分野に多くの関心が寄せられる要因ではないでしょうか。

一方、外的・心理的恩恵ばかりでなく、ペットは健康上の恩恵ももたらしてくれることがわかってきました。1992年に発表された大規模な調査の結果をご紹介しましょう。この研究は、豪州・メルボルンの病院を訪れた年齢20〜59歳の5741人について、ペットの飼い主か否かということと心血管疾患のリスクファクター(特定の病気にかかる可能性を増大させる生理的、行動的、環境的な因子)を調査し、比較分析したものです。この調査によると、784人の飼い主たちを4957人の飼い主ではない人と比べると、収縮期血圧、血漿トリグリセリドにおいて、飼い主の方がそうでない人より低いという結果が出ました。とくに、男性においては大きな差が生じています。

また、心血管系の病気をもつ人にとって、ペット飼育は有効だという結果も1980年に発表されています。この研究によると、心疾患で入院した患者の中でペットの飼い主の方が飼い主でない人より退院1年後の生存率は高いということです。ペットを飼っていない人39人のうち28.2%が入院後1年以内に死亡しているのに比べ、飼い主53人の場合は5.7%。犬以外のペットでも調査してみましたが、やはり飼い主の方が生存する確率が高かったという結果が出ています。

このように、近年、「人と動物の関係学」分野では数多くの研究が続けられています。今回の国際会議のテーマ「変わりつつある動物の社会的役割」にもあるように、この分野は社会をさまざまな面からサポートできる大きな可能性を秘めています。


「人間とコンパニオンアニマルとの関係学」研究メンバー3名も
プラハ会議に派遣!


6月のニュースレターでお知らせした通り、「人と動物の関係に関する国際会議」には、「コンパニオンアニマル リサーチ」から「人間とコンパニオンアニマルとの関係学」研究奨学金援助決定者3名を派遣することになっています。現在、3名はそれぞれの研究に向けて、調査や実験をすすめています。今回は奨学金援助決定の喜びの声、プラハ大会出席の抱負を語っていただきました。

●動物介在療法に参加する犬たちのストレスを探る! 内田佳子さん
「お知らせをいただいて大変嬉しく思いました。95年から1年間、米国留学をしていたんですが、日本に帰ってきて、『人と動物の関係学』分野が浸透してきているのを実感しました。私自身犬を飼っていて、動物介在活動などに参加していますが、ボランティア団体も増えていますね。でも、そのなかで用いる犬は、人間の都合だけで選別しているのが実状です。犬がストレスを感じているかどうかは、まだ調査が進んでいません。できれば、ストレスを感じず、喜んで参加してくれる犬を使いたい、ということから、動物介在療法、動物介在活動によって受ける犬のストレスの度合いを研究することにしました。今回、プラハ会議では、第一線で活躍なさる方々の講演を聴くことも楽しみですし、新しい研究の成果にも期待しています」
研究テーマ「動物介在療法に用いる犬の選択について」
酪農学園大学助教授 北海道出身・在住 36歳

●コンパニオンアニマルは高齢者の健康に寄与する
可能性が大きい!
上地 勝さん
「今回の研究は、茨城県のある村に住む在宅高齢者を対象に調査を行うものです。そのなかで、生活習慣の一つであるペットの所有が健康維持につながる可能性を検討したいと思っています。実は、今回、研究費が不足していたので、かなり苦しい状態だったんですよ。それで、お知らせをいただいて、本当に嬉しかったです(笑)。在宅高齢者を対象としたこの分野の研究は少ないので、この研究で人と動物の関係性の重要度がもっと明らかになれば、と思っています。プラハ大会に関しては、他の研究者の方々との情報交換を楽しみにしています。研究の方法論や研究論文をどこに報告しているか、ということに関しても興味がありますね」
研究テーマ「在宅高齢者におけるコンパニオンアニマルの健康度への影響
−IADL【Instrumental Activities of Daily Living
=手段的日常生活動作能力】及び生理学的指標を用いて−」
筑波大学大学院博士課程学生 沖縄県出身・茨城県つくば市在住 28歳

●犬の美容室で起きる問題行動の共通点に迫る! 荒川由紀子さん
「以前から美容室の中での犬の問題行動についてはよく聞いていたんです。でも、実際、調べてみると、思っていた以上に問題行動が多いということがわかり、今回、トリマーでもある共同研究者の北川さんに助けてもらいながら、トリマーの方や犬の美容室にアンケートを配布し、分析しようと思いました。問題行動の種類、犬種、性別、その背景などを探りたいと考えています。実をいうと、プラハ会議への参加は不安でした。興味のあるテーマなので期待はしていますが、どんなことになるのか心配だったんです。ただ、北川さんもこの会議に出席するということがわかったので、ちょっと楽になりましたが(笑)」
研究テーマ「犬の美容室内で発生する問題行動に関する調査研究」
麻布大学学生 福島県出身・神奈川県相模原市在住 21歳
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