Letter from CAIRC
1999.11 Vol.3 No.4

ペット可集合住宅建設に不動産関係者の関心高まる
「人間とコンパニオンアニマルとのよりよい共生を目指して」を
テーマにシンポジウム『集合住宅におけるペットとの暮らし』開催!

私ども「コンパニオンアニマル リサーチ」(略称CAIRC)は、去る10月18日、不動産関係各社に向けたシンポジウム「集合住宅におけるペットとの暮らし」を開催しました。会場となった東京・京王プラザホテル5階「エミネンスホール」には、不動産、建設、マンション管理会社、建築設計事務所、報道・動物関係からも300名以上の参加者を集め、熱気あふれる大規模なシンポジウムになりました。

「コンパニオンアニマル リサーチ」は今年10月に設立2周年を迎えました。この間、責任を持ってペットを飼うための啓発活動や都市生活の中でペットが住みやすい環境づくりに尽力してまいりました。最近では「コンパニオンアニマル」という言葉も普及し、ペットが人に及ぼす精神的な効果の重要性への社会的認識も高くなってきました。98年2月にはテキストブック「集合住宅で犬や猫と暮らす」の無料配布をスタートしましたが、このテキストに不動産関係各社からの問い合わせが相次ぎ、ペット可集合住宅を建設・管理するうえで、数多くの企業がまだ手探りの状態であることも認識させられました。現在、ペット可集合住宅は増加傾向にありますが、それにともなう集合住宅のペット問題も取りざたされています。それだけに、同じ集合住宅の居住者、地域住民など社会を意識した対応が必要だといえるでしょう。それは、個人単位の取り組みで解決できるものではなく、建設会社や管理会社のバックアップが必要なものと思われます。自治体レベルでペット問題に取り組むケースも増えてきました。今回は、ペット問題やペット可集合住宅にくわしい専門家3名の方々の講演、私どもで制作したビデオ上映などを通して、不動産関係者の方々と人間と動物が共生する社会を考えてみました。


講演とビデオ上映で集合住宅におけるペット問題を検証する!
CAIRC主催シンポジウムに
不動産関係者、マスコミ・動物関係者など320名が出席

シンポジウムは午後1時、公務で欠席した正田陽一コンパニオンアニマルリサーチ会長からの挨拶が代読され、スタートしました。内容は、「ペットの存在意義が大きくクローズアップされています。しかし、その一方でペットをめぐる問題やトラブルから集合住宅で飼育禁止になっていることも少なくありません。このシンポジウムを通して強い問題意識をもっていただきたいと思います」というものでした。この挨拶の後、今回の基調講演『都市生活とペット、犬と猫の行動学から』が始まりました。講師は獣医動物行動学がご専門の東京大学森裕司教授。ペットがいかに都市生活者のコミュニケーションを広げてくれるか、というテーマからペットの問題行動の解消法までお話しいただきました。

「米・コーネル大学の調査では、犬の問題行動のうち6割が攻撃性と分類されますが、その多くは自分がリーダーだと勘違いしたことから起こるもの。また、それまで溺愛されていたのにその家庭で赤ちゃんが産まれ、家族の関心が薄くなると、嫉妬によって攻撃性が高まることもあります。第2に、飼い主が出かけたときに無駄吠えをしたり、カーテンを破るなど破壊行動をとる場合。これを分離不安と呼んでいます。ほとんどの場合、行動学的に理解し、その対応をとることでおさまるものばかりです。また、犬は種別によって性質が違い、大きい犬だから飼いにくい、小さい犬だから飼いやすい、と考えないほうがいいでしょう。専門家のアドバイスに従い、ライフスタイルに合わせて犬種選びを行うことをお勧めします」

次は、「コンパニオンアニマル リサーチ」制作のビデオ上映を行いました。これは、国内初の公営ペット可集合住宅である神戸災害復興住宅や最新のペット可集合住宅のハード面、ソフト面の取り組みなどを取材したもので、住民の皆さんにもお話を伺いました。阪神大震災後の精神ケアにペットが果たした役割を含め、ペットは家族の一員という声を伺い、集合住宅におけるペット飼育推進の意義を改めて確認いたしました。

続いて、井本動物病院井本史夫院長による講演「集合住宅におけるコミュニティづくり−ペットクラブ設立と動物飼育」が行われました。井本院長は獣医師であると同時に、ご自身がお住まいの集合住宅に飼育者の会を設立した主要メンバーのお一人でもあります。

「私の住むマンションでは、飼育者の会を作るまで年間約10件のペットに関するクレームが出ていました。それが、ペットクラブ設立で大きく変わりました。設立翌年の苦情は2件、それ以降はゼロです。ペットクラブは、クレームを受け付ける窓口で、そのまま苦情処理を行う組織ですから迅速な対応をとることができるわけです。これで責任が明確になり、ペットを飼わない住民の方にも信頼感が生まれ、クレームゼロにつながっているのだと思います。また、ペットの飼い主も自治意識が芽生えますから、管理組合などへの関心も高くなります。このようなとき、管理組合がコミュニティ作りで果たす役割は非常に大きなものがあります。マンションの『管理』は、住民が快適な暮らしを行うために支援する機能をもっています。住民同士の関係性は企業とまったく違い、あくまでも共有共同体。縦に流れる指示系統が存在しないので、集合住宅内の紛争を解決するためにはコーディネーター的存在の管理会社のサポートが重要になるわけです。無駄な紛争を生まないためにも、ペットクラブ設立をできるだけバックアップしていただきたいと思います」

最後の講演は、吉田眞澄同志社大学法学部教授による「ペットに関する管理規約とペット飼育に関する判例の動き」です。吉田教授のご専門は担保法、不動産法、マンション法このほか、ペットの法律についても研究されています。

「マンションでペットを飼ってはいけない、という法律はありません。マンションでの合意はすべてマンション管理規約というルール集に集約されていますから、ここにペットを飼育できないと定められていなければペットは飼えるわけです。これまで集合住宅ではペットを飼えない、と考えられていましたが、最近では少し変わってきています。ペットを好む人が増えてきましたし、吠えなくて、気性のおとなしい集合住宅に適した犬種も知られるようになってきています。ペットのしつけやマナーへの関心も高まってきました。社会の中でペットを飼うという認識が高まれば、集合住宅のルールも変わっていくものだと思います。たとえば、フランスでは人がペットとともに生活することは人の基本的権利として認められています。ペットと暮らすことで得る恩恵も社会的に認知されています。ペット可マンションを建設・管理する際、共有部分は最低限の設備にすること、それに管理規約をあまりこと細かに決めないことをおすすめします。費用のかかる設備を作ると、ペットを飼っていない住民の反発を呼び、対立構造に発展する可能性もあります。また、管理規約は根本のところだけを押さえた柔軟に対応できるものがいいでしょう。犬の大きさなどあまり事細かに決めると逆効果になってしまいます」

講演終了後、3人の先生をパネラーに20分間の質疑応答がありました。質問の多くは足洗い場、壁材、床材などペット可集合住宅のハード面に言及したもの。ペット可集合住宅の床材について、「年老いたペットは肉球から汗が出ないうえ、足腰が弱っているので、フローリングの上では滑って立ち上がりにくいんです。ですから、老犬などを飼っている場合、すべてをフローリングにするのではなく、一部にカーペットを敷く方がスムーズな行動をとることができます」というアドバイスがありました。また、足洗い場についてのアドバイスは、「費用のかかる設備は必要ありませんが、足洗い場はあった方がペットを飼っていない人に対しても安心してもらえます」という意見と、「濡らした後、十分に拭けないことが多いので、それが原因で病気になることもあります。乾いたきれいな布で拭いてやれば十分です」という正反対の意見がありました。専門家によって、考え方が異なることもありますし、ペット可集合住宅の設備面は不動産各社がよりよい方法論を探っている最中です。今後、よりいっそうの検討に期待したいと思います。

会場で行ったアンケートでシンポジウムに参加した感想をうかがうと、現状がよく理解できたと考える人が65%以上を占めました。「ペットと人間の共生がどんなに必要かよく分かった」「ペット問題としてとらえていたことが実は人の問題であることがわかった」という意見がある一方で、「もっと具体的なことを聞きかった」という声もありました。今回は、人とペットの共生を訴えるということを大きな目的としたシンポジウムでしたので、具体的な内容に言及できない面もありましたが、これからの課題として、よりニーズの高いテーマに取り組んでいく所存です。
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