Letter from CAIRC
2001.8 Vol.5 No.4

第9回「人と動物の関係に関する国際会議」迫る
世界中からの期待を集め、9月、リオデジャネイロで開催

21世紀最初の大会にふさわしく
テーマは「人と動物―21世紀へのグローバルな展望」

9月13日から15日までの3日間、ブラジルのリオデジャネイロで、第9回「人と動物の関係に関する国際会議」(主催:IAHAIO=International Association of Human-Animal Interaction Organizations:人間と動物の関係に関する団体の国際組織)が開催されます。第8回大会からWHO(世界保健機構)も協賛する、この研究分野では最も大きな会議で、第9回となる今大会では25カ国、500名を超える研究者、専門家、関係団体のメンバー、そして、報道関係者などが参加することになっています。

発表される研究内容の幅も広く、獣医学や動物行動学分野だけではなく、歴史、文化、異文化、人口統計学、環境衛生、治療、心理学、社会学、そして、人類学などの見地から人間と動物との関係を検討していくことになっています。今大会は、21世紀最初ということもあり、「人と動物―21世紀へのグローバルな展望」がテーマです。文化や居住地域の違いを超え、21世紀における人と動物の関係を考えること、コンパニオンアニマルの飼育に関連した問題、飼い主のいない動物に関係する問題の解決策についての研究を発表すること、動物と共存していく社会づくりの必要性を認識してもらうために、この問題に携わる人々をサポートしていくことを目標としています。

この会議を主催するIAHAIOは1990年、人と動物の関係学分野に関心を寄せる各国からの要請によって設立された組織で、今では世界中から28団体が加盟しています。日本からは、ナショナルメンバーとして(社)日本動物病院福祉協会が、参与会員として当コンパニオンアニマル リサーチ(略称:CAIRC)が加盟しています。今、この分野は世界的にみても関心が高まっており、そのニーズも大きくなっています。このような状況の中、IAHAIOは、人と動物の関係や、人の暮らしのなかで動物の果たす役割についての研究、教育、情報共有を推進することを使命に活動しています。その一環がこの国際会議で、これまでロンドン(1977)、フィラデルフィア(1980)、ウィーン(1983)、ボストン(1986)、モナコ(1989)、モントリオール(1992)、ジュネーブ(1995)、そして、プラハ(1998)で3年に1度行われてきました。今回のリオ大会は南アメリカで開催される初めての大会となるわけです。

AAT/AAAの最新の研究結果が世界各国から
第3の分野として関心の高まるAAEも最新の発表が

人と動物との関係が人の心身の健康に大きな効用をもたらすことは、これまで数多くの研究結果が証明しています。たとえば、心臓麻痺を起こしたペットの飼い主はその後の生存率がペットを飼っていない人に比べて高い、という研究や、血圧や脈拍数が低い、孤独感・落ちこみ・恐怖・不安を訴える回数が低いというような数多くの事例がすでに発表されています。ダウン症、自閉症患者などへの動物介在療法(AAT=Animal-Assisted Therapy)の効果や動物介在活動(AAA= Animal-Assisted Activity)による効用についてもかなり研究が進んでいます。

そして、それらの研究と同時に、注目を集めているのが、動物介在教育(AAE= Animal-Assisted Education)と呼ばれる分野です。AAT、AAAに次ぐ第3の分野として、今回のリオ大会では最新の研究結果が発表されることになっています。今、犯罪の低年齢化、凶悪化は世界中で大きな問題となっています。心の育成に照準を合わせた教育の必要性が叫ばれています。この分野の研究が進めば、子どもたちの心の育成に人と動物の関係学が大きな役割を担う存在になるはずです。そのような点からも今回の会議は世界中から大きな期待が集まっているといえるでしょう。

また、リオ大会で目立つのは、研究発表を行う日本人研究者の方々が大幅に増えたということです。3年前の大会で日本からの発表は2件だけでしたが、今回は10件(口頭発表6件、ポスター発表4件)の研究結果が発表されます。その報告を行う研究者のうち、齋藤具子さん、木場有紀さんは、過去に、CAIRCの活動の一環である「人間とコンパニオンアニマルとの関係学」研究奨学金助成を受けられた方々です。正田陽一CAIRC会長(東京大学名誉教授)はこのリオ大会に大きな期待を寄せています。

「3年前のプラハ大会では800名を越える参加者があり、日本からの出席者は99名にものぼりました。開催国のチェコの次にたくさんの出席者を集めたのが日本でしたが、口頭発表を行った日本人研究者は1名だけ。大会への貢献度が少ないわけですから、少し残念でもありました。しかし、今回は6題もの研究が口頭発表で予定されていますし、CAIRC奨学金助成を受けた方々も発表を行うことになっています。やはり、サポートさせていただいた方々がこのように大きな会議で発表されることに深い感動を覚えずにはいられません。また、日本からの発表には介助犬を含むサービスドッグに関する研究が数多く取り上げられています。最近、介助犬の認知度は高まっていますが、このテーマの研究が進むことによって、さまざまな側面が見えてくる、それが大切だと思います。今回のリオ大会は、どの演題を見てもその発表が楽しみなものばかりですね」

ヒトと動物の関係学会会長を務める林良博東京大学農学部教授もリオ大会に注目している一人です。

「基調講演ではさまざまなテーマについての発表がありますが、そのなかに『高齢者』と『子供』がテーマとしてとりあげられていることが興味深いですね。現在、先進国では少子高齢化が進み、高齢者の割合がどんどん増えています。世界的に見て緊急度の高い課題ですから、社会全体としてとらえる必要がある。また、これまで人と動物の関係学分野の情報、方法論などは主に個人、グループ、NGOなどが蓄積してきたもの。それをもっと広く、社会全体で受け止め、国の政策としてどう組み込んでいくかということが、今後、非常に重要になるのでは、と思われます。そういう点で、今回のリオ大会に大きな期待をしています。21世紀最初の大会にふさわしい、充実した内容になるでしょう」

■基調講演の発表者と演題、研究報告を行う日本人研究者とその演題

基調講演の発表者、そのテーマ、日本からの研究発表者とその演題をご紹介します。

●大会基調講演テーマ
「21世紀における変わりゆく介助動物の社会的位置付け:日本から学ぶこととは」
  高柳友子医学博士(日本)
   
「人の健康とコンパニオンアニマルが与える影響について」
  ジェームズ・リンチ博士(アメリカ)
   
コンパニオンアニマルおよびコンパニオンアニマルと人との関係を含めた
21世紀におけるラテンアメリカでの獣医学教育について」
  レオポルド・エストル博士・教授(アルゼンチン)
   
「都市におけるコンパニオンアニマルの重要性および
コンパニオンアニマルとの間に存在する様々な関係について」
  アラン・M・ベック教授(アメリカ)
   
21世紀における高齢者に対してコンパニオンアニマルが持つ重要性」
  エルハルド・オルブリッヒ博士・教授(ドイツ)
   
「心理学的見地からの人(とくに子供)と動物の関係について:その層別解析」
  ボリス・チルルニック医学博士(フランス)
   
「野生生物とコンパニオンアニマルに対する態度の変化について」
  カルロス・ドゥルース博士(コスタリカ)
   
「21世紀におけるコンパニオンアニマルの
福祉向上に向け協力する非政府組織(NGO)と政府機関について」
  ジョイ・レネイ(イギリス)、マルコ・シャンピ(ブラジル)

●日本から参加する研究発表者とその演題

「コンパニオンアニマルの飼育と、手段的日常生活動作能力(IADL)及び
降圧剤使用との関連−日本人在宅高齢者に関する研究−」
    研究発表者: さいとう ともこ
齋藤 具子(筑波大学医療技術短期大学部非常勤講師)
    共同研究者: 上地勝、加納克巳
 
「幼年期の動物との経験と成人してからの動物観:
イギリスと日本の若者を対象にした比較調査」
      みうら あやか
研究発表者: 三浦 彩香(広島大学生物生産学部・学術振興会特別研究員)
    共同研究者: John Bradshaw、谷田創
       
「日本の幼稚園における動物飼育に関する調査:教育的効果と今後の課題」
    研究発表者: こば ゆき
木場 有紀(広島大学大学院生物圏科学研究科)
    共同研究者: 谷田創
       
「顔の表情を用いた障害者乗馬の評価法の有用性について」
    研究発表者: かわきた  けんじ
川喜田 健司(明治鍼灸大学生理学教室)
    共同研究者: 桑野素子、慶野裕美、慶野宏臣、荒田谷穣治、山西ゆみ子、
田谷与一
       
「介助犬のアクセス問題:犬の社会参加基準の比較研究」
      やまざき けいこ
研究発表者: 山崎 恵子(ペット研究会「互」主宰、日本介助犬アカデミー常任理事、 優良家庭犬普及協会常任理事)
    共同研究者: 高柳哲也、高柳友子
       
「介助犬トレーナー養成プログラム」
      やまざき けいこ
研究発表者: 山崎 恵子(ペット研究会「互」主宰、日本介助犬アカデミー常任理事)
    共同研究者: 高柳哲也、高柳友子、鷲巣月美、山口千津子
       
「障害者施設における動物介在療法パイロット・プログラムの対象者選択基準」
(ポスター発表)
      やまざき けいこ
研究発表者: 山崎 恵子(ペット研究会「互」主宰、医療法人雄心会
山崎病院嘱託AATコーディネーター)
    共同研究者: 高山和彦、野崎秀次、長谷川元、蒲生としえ、井本史夫
       
「介助犬と優秀家庭犬の安全基準 −公衆衛生からみた人畜共通感染症のリスク」(ポスター発表)
      たかやなぎともこ
研究発表者: 高柳 友子(日本介助犬アカデミー専務理事、
東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学分野講師、
内科医師)
       
「肢体不自由者の自助技術として介助犬に求められる作業項目」(ポスター発表)
      たかやなぎともこ
研究発表者: 高柳 友子(日本介助犬アカデミー専務理事、
東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学分野講師、
内科医師)
       
「日本における視覚障害リハビリテーションと盲導犬」(ポスター発表)
      たかやなぎやすよ
研究発表者: 高柳 泰世(愛知視覚障害者援護促進協議会会長、
本郷眼科院長)
       
*IAHAIOのWebサイトでも大会情報を得ることができます。
URL:http://www.iahaio.org 事務局E-Mail:rio2001@i-et-e.fr
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