Letter from CAIRC
2001.11 Vol.5 No.6

『集合住宅とペット』110番に大きな反響
2日間で北海道から沖縄まで130件の相談が寄せられる


それぞれの問題に適切なアドバイスを行うため
獣医師、法律家、マンション管理専門家などを招いて


11月16〜17日、「集合住宅における動物飼育を考える協議会」(※1)と「コンパニオンアニマル リサーチ」(略称:CAIRC)は電話相談室『集合住宅とペット』110番を開催いたしました。この催しは、集合住宅でのペット飼育に関するさまざまな相談を電話で受けつけ、その場で各分野の専門家にアドバイスをいただくというもので、北海道から沖縄まで計130件のご相談が寄せられました。

私どもCAIRCは、これまで人間と動物が共生できる環境づくりに力を注いでまいりました。97年にはテキストブック「コンパニオンアニマルとともに−集合住宅で犬や猫と暮らす」を刊行し、その後、改訂版も発行。これまでに3万部以上を無料配布させていただいています。テキストブックは今年オープンいたしましたCAIRCホームページ(http://www.cairc.org)で無料ダウンロードサービスも行っています。また、建築関係者、不動産関係者、管理会社、管理組合を対象の中心としたシンポジウム「集合住宅におけるペットとの暮らし」も東京、大阪、福岡と開催してまいりました。

電話相談室もこの取り組みの一環で、獣医師、法律家、マンション管理関係者などそれぞれの分野の専門家を招いて、ご相談にお答えいただくというものです。主催は「集合住宅における動物飼育を考える協議会」と「コンパニオンアニマル リサーチ」で、後援として、「社団法人日本獣医師会」、「社団法人東京都獣医師会」にご協力いただきました。共催団体の「集合住宅における動物飼育を考える協議会」は92年に集合住宅での動物飼育が社会に容認されることを目的に設立された協議会です。代表世話人で獣医師の清野光一先生は次のように述べられています。

「ペット飼育の問題では『集合住宅における動物飼育を考える協議会』にも数多くのご相談が寄せられています。これまでも個別対応でさまざまなアドバイスを行ってきましたが、このような機会を共催することで、より多くの方々のご質問に応えられ、嬉しく思いました。130件ものご相談が寄せられたことは、この問題が今、いかに注目されているか、いかに重要であるか物語っていると思われます。一つひとつの団体がそれぞれこの問題に取り組むだけではなく、今後もできるだけこのような機会をもち、協力し合って集合住宅とペットの問題に向き合って行きたいと思います」

なお、アドバイザーを務められたのはペット法学会副理事長で、法律家の吉田眞澄先生、井本動物病院院長で、獣医師の井本史夫先生、相川動物医療センター獣医師高倉はるか先生など計10名の専門家の方々です。

北海道、東北、九州、沖縄、と広範囲からの電話相談
集合住宅とペットは大都市圏の問題から、共生を考える重要なテーマに


「集合住宅における動物飼育を考える協議会」と「コンパニオンアニマル リサーチ」は電話相談を開催後、ご相談いただいた方々からの情報や相談内容を集計いたしました。電話相談を受けつけたエリアが東京23区内の03地域だったため、相談者の居住する地域については、東京都30%、神奈川県18%、千葉県7%と相談者全体の半数以上になります。しかし、それ以外の道府県に関しては北海道から沖縄まで非常に多くのエリアから寄せられ、集合住宅とペットの問題は大都市圏に限らず、集合住宅居住者共通のテーマであることを再認識しました。また、相談時間は平均30分とかなり長く、それだけ問題が深刻であることも浮き彫りにされました。

なお、相談内容を項目ごとに分けて見ると、[1]管理規約について(ペット可検討中、ペット飼養細則、ペットクラブ設立含む)(25%)[2]その他(24%)[3]飼育マナー(14%)[4]ペット飼育禁止集合住宅でペット飼育者がいて問題になっていること(14%)[5]ペットのしつけについて(11%)の順となっています。管理規約について考えるということは、集合住宅でペット飼育を行う際に不可欠な要素です。管理規約改正、あいまい規約の解釈をめぐる問題などクリアにすべき課題も多いといえるでしょう。内訳を見ていくと、管理規約をペット可に向けて検討中という相談者の方も多く、集合住宅でのペット飼育が着実に浸透していることもはっきりわかる結果となりました。ペット飼育禁止にしたいという非飼育者の方からの相談や販売時にペット飼育可物件と説明を受けたのに、実際にはペット飼育禁止であったという相談もいただきました。また、2番目に多かった「その他(24%)」は、相談者の抱える問題がそれぞれ微妙に異なり、カテゴリーとして分けにくいものが多いという状況の現われと受け取ることができるでしょう。

あいまい規約の解釈で意見がすれ違う場合は、話し合いの場をもち、ルールについて考えよう

非常にたくさんの方々から相談いただいたカテゴリーのひとつが「管理規約について」です。管理規約の中には「危害を加える動物は飼育禁止」というようなあいまい規約をもつ集合住宅も少なくありません。しかし、あいまい規約の解釈ではこれまでにも数多くのトラブルがありました。ご相談は管理規約に「危害を加える動物は飼育禁止」という一文があることから、その解釈をめぐってもめているというものです。

「最近、転居して来た方が大型犬を飼っていて、住民間でトラブルになっているとの相談でした。ペット飼育者は性質のおとなしい犬種だし、しつけもきちんとしているので危害は加えない、とおっしゃる。ただ、大型犬ですから抱きかかえることもできず、共用部分ですれ違うときに怖い、ということです。あいまい規約のまま解釈の違いで意見をぶつけ合い、トラブルが大きくなる可能性もあります。そうなると、管理組合の活動を含め、マンションの管理全体に問題が出てきかねません。マンションの欠陥はハードだけではなく、ソフトである管理規約に問題がある場合も多いようです。実際に危害を加えたり、迷惑をかけたりしないようにすることが前提になりますが、さらに一歩進め、規約改正、飼養細則づくりを含め、居住者の皆さんでペット飼育について考えてみてください」(吉田先生)

ライフスタイルの多様化にともないリゾートマンションもルールを確認したい


あるリゾートマンションでは週末などに利用する世帯が多いため、ペットを連れてくることがあっても黙認状態だったといいます。しかし、ライフスタイルの多様化により居住者が増える今、そのマンションで飼育されているペットも増え、トラブルも生じてきた、という相談が寄せられました。今後、リゾート地にある集合住宅では増加していきそうな問題です。この相談には集合住宅管理組合センター事務局長の有馬百江氏にアドバイスをいただきました。


「黙認の状態がいちばんよくないので、ペット飼育可への規約改正も含めて理事会で検討してください。その場合、トラブルの原因を探ること、飼育不可の方々の意見をよく聞くこと、その理由を見つけてそれをどのように対処し、解決するのか話し合っていただきたい、とアドバイスしました。そうすれば、規約改正への方向が見つかるとお答えしました」


一人でもルールを守らない飼育者がいれば飼育禁止も。飼育者の責任を明らかにする


飼育者のマナー向上は集合住宅に限らず、ペット飼育を行う際の重要な問題です。ペット可集合住宅の管理組合理事からのご相談は、ルールを守らないペット飼育者がいて、クレームが多くて困っている、というものでした。


「猫の糞尿、鳴き声、共用部分は抱いて移動する、などのルールが守られていない、とのことです。この場合は、飼育者を集め、話し合いをすることが重要です。一人でもルールを守らない人がいれば、飼育を全面的に禁止にせざるを得ないということも理解してもらい、飼育者の自己管理、自己規制が不可欠であることをわかってもらうよう務めてください、とアドバイスしました」(有馬氏)

お互いに助け合い、励まし合うためにもペットクラブを設立しよう

管理規約の改正に向け、動き始めている集合住宅も少なくありません。規約改正のノウハウや方法論に関する質問も多数寄せられました。

「個々の飼い主が的確にしつけを行い、マナーを守ることも大切ですが、個人の力には限界があります。しかし、多くの人が知恵を出しあえば、その分、可能性も広がります。そこで、まず、ペット飼育を行っている方々でペットクラブをつくることをおすすめしています。このクラブは、あくまでも可能性を広げる目的で設立するものですから、同好会やペット自慢に花を咲かせるようなものであってはいけません。それと同時に、ペットを飼っていない人にも問題を理解してもらうため、管理組合にペット飼育を検討する専門委員会の設置を依頼するようアドバイスしています」(吉田先生)

「隠れ飼い」を続けるのではなく、ペットクラブ設立、規約改正への努力を

ペット禁止の集合住宅で、いわゆる「隠れ飼い」を行っているの方々からの相談もありました。「分譲マンションに住む犬の飼育者です。現在、理事会から義務違反者に対する処置を取る用意がある、との通知がきたので心配です」という相談には集合住宅管理組合センター副代表理事の島幸俊氏からアドバイスいただきました。

「理事会として『用意がある』と通知をすることは可能ですが、一定期日に『飼育中の犬を保健所などへ送致せよ』という措置をとることはできません。飼育者同士でペットクラブを設けて、飼育マナーの向上につとめ、ペット飼育に対する居住者の賛同を得るように努力してください。一代限りの妥協案より、時間をかけて規約改正の努力をするのが正道といえるでしょう」

賃貸マンションでの「隠れ飼い」は率直に話して理解を仰ごう

ペット禁止条項のある賃貸マンションで、「隠れ飼い」している方から今後の対応策についての質問もありました。

「賃貸借契約の場合、賃貸人と賃借人との信頼関係が破壊されたと評価されると契約の解除が認められることになります。しかし、ペット禁止条項があるのにペットを飼った場合、それがただちに信頼関係を破壊するとは言えず、たとえば、小鳥、金魚の類であれば、まず問題ありません。さて、猫の場合ですが、これまで裁判で争われた事例を紹介すると、多頭飼育で、周囲に多大な迷惑をかけているケースでは信頼関係破壊と評価されています。一頭飼いの場合は、必ずしも明確ではないのですが、飼い主も飼育マナーを守り、的確にしつけを行い、誰にも迷惑をかけていないのであれば、信頼関係破壊と評価されることはないと思われます。いずれにせよ、隠れ飼いはせず、ここで述べたことも含めて、賃貸人と、率直に話し合いをされることをおすすめします」(弁護士石井逸郎先生)

裁判で争うより事前に話し合うことで問題解決に取り組んで欲しい

法律面で言えば、なかなか難しい状況にあるのがペット問題。現状では裁判で争うより事前に話し合うことで問題解決に取り組んだ方がいい、というのが先生方の一貫した意見です。「管理組合などから強硬な飼育禁止令を受取ったが、裁判で争いたい」というペット飼育者からのご相談には吉田先生にお答えいただきました。

「管理規約で飼育禁止という場合でも、管理組合、ペットの飼い主双方ともに裁判はあまりおすすめできません。トラブルの芽が出てきたら、大きくなる前にきちっとした対応策を考え、さらに一歩進めてトラブルを防ぐことを考えてもらいたい、と申しました。トラブルがないように、たとえトラブルが発生しても大きくならないように、ペットクラブをつくって、飼い主同士でマナー向上を話し合ったり、反対者の意見を聞いたりして対応すべきです。また、かみつき事故に対する法的な問題を心配される方もいます。これは状況によって違うので一概には言えませんが、犬が起こした事故は犬の飼い主の責任です。事故を起こさないことがなによりも大切ですが、事故が起こってしまえば、誠実に対応し、納得してもらう以外ありません。『人にかみつくような犬ではありませんので、あなたが悪いことをしたのでしょう』などというような態度に出れば、よい解決になりません」

ペットの問題行動は適切な対応が不可欠。すぐに専門家にみせましょう

ペットの飼育方法や問題行動に関する相談も多く寄せられました。吠える、かむという問題行動は大きなトラブルに発展することもあるので非常に注意が必要です。

「吠えたり、かんだりという問題行動は優位性攻撃、別離不安など原因があり、飼い主の適切な対応により改善・解消できる場合がほとんどです。困った行動がみられるときは是非早めに専門家に相談してください。また、このような場合、飼い主側が大きな問題ととらえなかったために、近隣が迷惑をこうむることもあります。とくに、だれもいなくなると別離不安のため吠え続ける犬の場合、飼い主のほうは吠えていることをほとんど知らず大きなトラブルに発展するケースもあります」(東京大学大学院農学生命科学研究科獣医動物行動学研究室 加隈良枝先生)

ペットの室内飼育は健康とコミュニケーションに好影響

ペットの室内飼育を心配する飼い主の方も少なくないようです。「去勢済みの猫を飼育しています。来年、ペット可の分譲マンションに引っ越す予定ですが、これまでは自由に外へ出していたので心配です」という質問には井本先生からアドバイスをいただきました。また、犬の室内飼育に関しての相談にも答えていただいています。

「引っ越し直後は一部屋だけにいるようにさせ、その後、新しい空間に少しずつ慣らしていくようにしましょう。環境さえ整っていれば、猫は狭い部屋でも十分に適応できる動物です。屋内飼育の場合、伝染病や交通事故の危険もありません。ただ、高い場所や狭い空間が好きな猫のために小さな箱を高い場所へ置いたり、家の中を工夫したりするといいでしょう。また、犬の場合も室内飼育で問題ありません。庭で犬を飼うより飼い主との交流がはかることができるため、犬にとってもより快適な住環境といえるでしょう。しかし、散歩だけは欠かさずに。散歩は他の犬とのコミュニケーションをはかる場でもあり、犬の健康にも大切です」


動物の毛アレルギーの方との接し方は心配りが不可欠です


猫の毛アレルギーなどの理由から集合住宅でのペット飼育に反対する人もいます。「近所に猫の毛アレルギーの方が越してきました。今のところ、もめているわけではありませんが、どのような注意が必要ですか」という質問が寄せられました。

「アレルギーといっても程度によって対応は違います。猫の毛、フケ、ノミの死骸などによってアレルギーが発生し、子どもはぜん息が出る場合もありますから、室内飼育を徹底していただきたいと思います。集合住宅で人に迷惑をかけないためには、掃除をマメにする、犬や猫の布団は掃除機で吸ってから干す、空気清浄機を設置する、ペットを清潔に保つ、という配慮が必要です。つまり、ペットの健康管理を適切に行うことがアレルギーをもつ方に対する心遣いにつながります」(高倉先生)

アレルギーを持つ方とペット飼育者が同じコミュニティで暮らすとき、相手に対する心遣いをきちんと表すことができる場合と、そうでない場合はまったく関係性が異なってきます。ペットを飼わない人にどこまで配慮ができるか、それはペット飼育者がいつも自分に投げかける必要のある大きな問いかもしれません。


アドバイザーとしてご協力いただいた井本先生はおっしゃいます。
「犬の鳴き声がうるさいと感じたとき、飼い主が特定できないと、犬の飼い主すべてが悪いことになりがちです。ところが、ペットクラブがあればクレームを受け付けてもらえる。それだけでも住民感情は違いますし、迅速な対応も可能になる。私自身の実体験でもありますが、ペットの飼い主が相手に歩み寄り、コミュニティづくりに貢献していけば住民全体の信頼を得ることができる、と確信しています。ペット飼育はとくに珍しい要求ではありません。そして、ペット問題を解決できる集合住宅は理想的なコミュニティといえると思います」

今回、数多くのご相談を受け、ペット飼育者、管理組合、管理会社、ペット非飼育者それぞれが集合住宅とペットの問題に直面し、問題解決に向けて取り組んでいらっしゃることを改めて実感いたしました。私どもCAIRCはそんな方々のサポートを行うことで、人間と動物が共生できる社会づくりのお役に立ちたいと考えています。正田陽一CAIRC会長はこう語ります。

「集合住宅は、それぞれ立場の違う人々がともに暮らすコミュニティです。動物が嫌いな方もいれば、動物を家族の一員と感じている方もいる。そんな感じ方、考え方の違いから問題が生じているわけです。今は異なる考え方の人々が上手に共生しているコミュニティも増えてきました。対立してしまう前に、飼育者はペットクラブを設立し、マナーについて学ぶこと、ペット飼育に反対する人たちの意見に耳を傾け、誠実に対応していくことが大切です。飼育を始めた以上、動物に対する責任を全うすることは義務ともいえるものですから、責任を持って適正にペットを飼っていきたいですね」


※1「集合住宅における動物飼育を考える協議会」に加入している団体
(社)日本動物保護管理協会 (社)横浜市獣医師会開業部会 (社)東京都動物保護管理協会 (社)ジャパンケネルクラブ (財)日本動物愛護協会 (社)日本動物福祉協会 (社)日本愛玩動物協会 (社)日本動物病院福祉協会 (社)日本動物薬事協会 ペットフード工業会 日本ペット用品工業会 日本訓練士団体連合会
 
 
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