Letter from CAIRC
2002.4 Vol.6 No.1

ペット可賃貸集合住宅、全国各地で着工始まる
“犬や猫と暮らす「経営 管理サポート読本」”好評配付中


価値観の多様化で、ペット可賃貸集合住宅急増

コンパニオンアニマル リサーチ(略称:CAIRC)では、当団体が制作した不動産会社・管理会社向けの“犬や猫と暮らす集合住宅「経営管理サポート読本」”の無料配布を4月1日からスタートしています。この小冊子を制作した背景には、「集合住宅でペットと暮らしたい」というニーズの高まりがありました。不動産・管理会社の皆様からペット可賃貸集合住宅の運営に関する質問など数多くのお問い合わせも寄せられています。98年に制作した「テキストブック集合住宅で犬や猫と暮らす」に対しても、賃貸物件を抱える不動産・管理会社からのお申し込みが増えています。現在、日本の主要都市の集合住宅比率は過半数を超え、ペット飼育が好きな人の数は7割近くまで達しています(2000年6月、旧総理府調べ)。「集合住宅でペットを飼育したい」というニーズは定着し始めていると言ってもいいでしょう。それに伴い、ペット可の分譲物件は首都圏を中心に増えていますが、賃貸や既存の集合住宅、首都圏以外の都市ではペット可集合住宅の定着にまだ課題を抱えているようです。今回は、首都圏以外のペット可賃貸集合住宅の現状を調査してみました。

日本全国を比較すると、集合住宅比率の差はもちろん、地域による人々の考え方、集合住宅に対する認識などさまざまな違いもあります。その一方で、不動産・管理会社の皆様からのお問い合わせは北海道から沖縄まで及びます。借り手市場といわれる現在、入居率安定のためにペット可集合住宅経営・管理に乗り出したい、という意向も強いでしょう。最近では大手ハウスメーカーが入居者のライフスタイルに合わせて、設備を選択できる賃貸集合住宅を発表しています。選択肢の中にはペット可も含まれていて、「上質で個性的な賃貸集合住宅」をアピールしています。

全国約880の不動産・管理会社等が加盟する(財)日本賃貸住宅管理協会の機関のひとつである日管協総合研究所所長の田島弘直さんにお話をうかがいました。 「今、バリアフリー、ペット対応、外国人対応、楽器対応などさまざまなニーズに沿った賃貸集合住宅が出てきています。資産デフレの時代ですし、“生涯賃貸派”を選択する層も増えてきました。ただ、今のところ、ニーズに合う、質の高い賃貸集合住宅は十分とはいえません。ペット可などを盛り込んだ質の高い集合住宅は新しいタイプの、ニーズの高い賃貸物件だと思います。また、これまで、賃貸物件の中でコミュニティをつくるといっても限界がありましたが、暮らしやすさを追求していくと、今後はコミュニティづくりも重要になってくるでしょう。とくに、ペット可集合住宅の場合、円滑な隣人関係を築き、地域との関わりをつくることが大切です。今、ニーズの高い高齢者向け住宅にもペットを、という声もある。癒しの効果も注目されている。そういう点で、ペットは賃貸集合住宅でのコミュニティ作りに役立つかもしれませんね。今後は賃貸住宅でもペットクラブなどが必要になってくると思います」

情報収集のために住宅見学やセミナーに参加
自らペット飼育を行い、ペット可集合住宅管理の自信を深める


大都市圏での集合住宅比率は約7割。ペット可集合住宅が占める割合は地域によっても違いますし、それぞれの不動産・管理会社の取り組み方でも異なるようです。

まず、最初にうかがったのは、名古屋まで電車で20分という通勤圏にある愛知県・東海市。東海市は名古屋の衛星都市のひとつというだけでなく、近くには大手企業の工場も多く、賃貸集合住宅のニーズが増えているエリアです。不動産・管理会社(株)ハッピーは、この地域で現在4棟のペット可集合住宅を取り扱っています。この夏には、あと2棟の新築物件の管理をスタートする予定です。これら一連のペット可物件を企画したのは代表取締役の沼澤春雄さん。スクラップ帳には7〜8年前からのペット可集合住宅情報に関する新聞や雑誌の切り抜きが納められ、自ら、建築家と見学に出かけた東京のペット可集合住宅の写真もあります。その後もセミナーなどに積極的に参加し、徹底的に情報を集めました。

「セミナーでは、しつけを行う現場も見たんですが、想像していたより簡単に行えることに驚きました。もともと犬が好きだったこともあって、自宅でも犬を飼い、自分でもしつけました。飼育してみると、トイレも鳴き声もちゃんとしつけられる。そして、大事に飼っている人ほどきちんとしつけを行っていることも知りました。情報も集め、自分の目でいろいろなものを見て、これならいけると自信を持った時点で、お客様に提案しました」

実際に、(株)ハッピーが管理する3棟のペット可集合住宅を見せていただきました。足洗い場、ペット用ドア、玄関ケージ、ペット対応壁紙などいくつかの設備はありますが、けっして設備に重点を置いたものではありません。それより、「ペットの飼い主の意識が大切」というのが(株)ハッピーの姿勢です。契約時には、地域とのコミュニケーションを考えるため、「出来るだけ町内会に入ってください」と呼びかけ、周囲への配慮を意識してもらうため、しつけの徹底も促すようにしています。いずれは、ペットクラブの設立やしつけ教室なども行いたいと考えています。近くにできたドッグランの見学に行く予定もあります。また、玄関口には飼育しているペットの写真が表示され、なにかトラブルが発生したときに、どこのペットかはっきりわかるようにもなっています。

「入居率は非常に高いので、オーナーさんには納得していただいています。とくに1棟目の管理が軌道に乗ってからは、ペット可集合住宅の経営をお勧めしやすくなりました。ペットを飼っていることで部屋の傷みを心配されるオーナーの方も少なくありませんが、ペットのしつけをきちんと行っていると、部屋へのダメージも少なくてすみます。ペット不可にしても、隠れ飼いをして部屋を傷められる可能性も少なくない。その予防にもなると思います。現在、うちの場合、家賃はペット可だからといってほかより高い設定にはしていません。敷金だけ1カ月分多い4カ月にして、これが原状回復費となります」(沼澤さん)

丁寧に、着実にペット可集合住宅に取り組んできた同社のノウハウは今年新たに4棟のペット可賃貸集合住宅の管理を始めることで、いっそう充実したものになりそうです。

慎重にノウハウを蓄積中の企業も多い反面
地域によってはオーナーの意識に大きな課題も


不動産業界の方々にお話を聞くと、新しい商品を生み出すのは九州が多いといわれているようです。ペット飼育者だけが住める専用集合住宅もすでにいくつか建設されています。ただ、そんな九州でも非飼育者が住めるペット可集合住宅となると、そう多くありません。床材、壁紙などハード面に関してはかなり統一した見解が生まれているものの、最も難しいのがソフト面の問題です。多くの企業が慎重に、ノウハウを集め、機をうかがっているのが実情です。福岡の大手不動産・管理会社のひとつ、(株)三好不動産資産活用部有効活用課の吉住裕之さんにお話をうかがってみました。

「隠れ飼いも多いし、ニーズはあります。空室対策としても有効です。でも、失敗すれば、信用問題になりますから、どこも慎重になっていると思います。当社も、昨秋、管理・企画・賃貸部門の担当者からなるプロジェクトチームをつくって、ノウハウを蓄積しています。ハード面はそんなに心配していませんが、ソフト面はさまざまなトラブルが予想されます。近隣との問題やペットの鳴き声など…。オーナーの方々と管理会社は信頼関係で成り立っていますから、失敗は許されません。このような問題に対して、きちんと対応策を練り、システム化できた時点での取り掛かりになると思います。今は誓約書、ペット面接など一つ一つの事項を検討している段階です」

地方によって課題も違います。大阪の不動産・管理会社(株)阪南住宅は新築物件が少ない地域での管理を行っています。

「やはり空室対策という理由がほとんどです。ニーズはありますし、飼いたいと言う人も多い。こっそり飼う人もいます。でも、今、ハード面を備えたペット可集合住宅はないので、既存の住宅をペット可に変更しています。いずれペット可にするために、新しく入居される方に『1〜2年後にペット可になるかもしれない』ことを伝え、それでもOKということで覚書をいただき、ペット可になったときに備えたりもしています」((株)阪南住宅 代表取締役 福岡孝則さん)

また、同じ大阪の(株)三島コーポレーションも6棟のペット可集合住宅を管理していますが、ここも、管理しているペット可集合住宅すべてが途中からの条件変更でペット可物件にしたものばかりです。

「正直言って、まだまだ難しいのが実情です。大阪の場合、敷き引き(礼金)5〜6カ月というのが慣習ですから、部屋の原状回復は100%入居者が払うという認識があります。財産をあまり汚されたくない、傷つけられるのはいや、と考えている方が多いんですね。空室対策としてペット可は受け入れたけれど、空室率が低くなったら、できればペット不可に戻したいと考えるオーナーの方もいらっしゃる。地域性もあるのか、新築分譲マンションでもペット可はそう多くありません。ニーズはありますが、非常に課題も多く、ペット可を定着させるには、オーナーの方々に意識を変えていただく必要もあるかもしれません」((株)三島コーポレーション 管理事業部部長 千々岩大輔さん)

前出の田島さん(日本賃貸住宅管理協会総合研究所所長)は言います。
「91年以降、借り手市場が続いています。とくに、関西では阪神大震災の後、賃貸住宅が数多くつくられたため、被災者が自分のこれまでの生活を取り戻した後、供給量がだぶついています。そのため、新規物件も少ないという状況もあります。現在は、全体に落ち着いてきていますが、借り手市場であることは変わりません。ただ、住む人にとっては自分のニーズに沿った物件が比較的安価で借りられる、いい時代ともいえるでしょう。原状回復費も以前は入居者がすべて負担する形でしたが、今はオーナー側の負担も大きくなっています。国でも平成10年に原状回復のガイドラインをつくりました。ガイドラインですからあくまでも目安ですが、自然損耗部はオーナー側の負担であるということが、かなりのエリアで浸透してきました。関西などは比較的強い慣習をもっていますが、徐々に変わりつつあるといえるでしょう。ペット可賃貸集合住宅に関しても全国のそれぞれの規約を持ち寄ってみると、使いやすいものが出来ると思います。『経営管理サポート読本』のような手引きも参考になるでしょうね」

首都圏も98年の段階ではペット可分譲マンションの新規供給戸数はわずか1.1%に過ぎませんでした。ところが、2001年には供給量全体の19.1%になっています(不動産経済研究所調べ)。わずか4年で急激な変化を遂げたことを考えると、ペット可物件の少ない地域の変化もけっして遠い先とは思えません。また、すでに賃貸集合住宅供給過剰になっている現在、多くの不動産・管理会社で借り手のニーズに沿った物件を提供する必要性に迫られている実感がある、という声も聞きました。今年、竣工するペット可物件を取り扱う直前の企業も数多くありました。まだまだ数多くの課題がありますが、賃貸市場でもペット可のニーズは一層大きくなり、確実に広がりを見せ始めていることは間違いないでしょう。

犬や猫と暮らす集合住宅のための
「経営管理サポート読本」、「飼い方読本」2冊のハンドブックを制作


冒頭でも紹介いたしましたが、CAIRCでは人間とペットの共生を目指し、2冊の小冊子を制作し、現在、購読を希望する皆様に配布しています。2冊はそれぞれ、不動産会社、管理会社向けの“犬や猫と暮らす集合住宅「経営管理サポート読本」”(以下、「経営管理サポート読本」)と、ペット可集合住宅にこれから入居する、あるいは、すでに住んでいるペットの飼い主向けの“犬や猫と暮らす集合住宅「飼い方読本」”(以下「飼い方読本」)となっています。

「経営管理サポート読本」は、ペット可集合住宅の経営・管理のメリットや企画立案にも役立つ情報を掲載したもので、不動産、管理会社等への無料配布を行っています。ペット可集合住宅に興味を持つ不動産、管理会社の皆様の資料として、賃貸集合住宅のオーナーの方々にペット可集合住宅経営を提案する際のやさしく、読みやすい説明書としてご利用いただくことも想定しています。また、「飼い方読本」は、集合住宅でペットを飼う上でのマナーや役立つ情報を中心に編集したものです。不動産・管理会社などの方々がペットオーナーの方々に配り、マナー向上などの啓発活動にお役立ていただくことを目的にしています。こちらは1冊100円での実費配布で、基本的に10冊単位でのお申し込みをお願いしています。この2冊は4月1日に配布をスタートいたしましたが、新聞などでもご紹介いただき、わずか3週間のあいだに、不動産・管理会社から数多くのお申し込みをいただいています。

お申し込みは、入手したい読本の名前、希望冊数、社名、業種、担当者名、送付先、連絡先を明記のうえ、コンパニオンアニマル リサーチまでEメール、FAXでお送りください。送料は各自ご負担いただいておりますのでご了承ください。

*ペットの飼い主向けに、飼育マナー、しつけ方などを書いたテキストブック「集合住宅で犬や猫と暮らす」もこれまで通り無料配布しております。
 
 
copyright