Letter from CAIRC
2002.12 Vol.6 No.4

人とペットが共生できるコミュニティづくりを目指し
第2回『集合住宅とペット』110番開催

獣医師、法律家などそれぞれの分野の専門家に
ペットとの共生を目指す真剣な相談が寄せられる


11月15〜16日、コンパニオンアニマル リサーチ(略称:CAIRC)は<第2回電話相談室『集合住宅とペット』110番>を開催いたしました。この催しは、集合住宅でのペット飼育に関するさまざまな相談を受け付け、その場で各分野の専門家の方々にアドバイスをいただくというもので、昨年に続き、今年も数多くのお電話が寄せられました。

これまで、CAIRCは「人間とコンパニオンアニマルとの関係学」のサポートをはじめ、ペット可集合住宅の推進など人間と動物が共生できる環境づくりのために力を注いでまいりました。皆様からいただくご相談や質問にお答えするために、97年にはテキストブック「コンパニオンアニマルとともに−集合住宅で犬や猫と暮らす」を刊行し、これまでに4万部近くを無料配布させていただいています。また、昨年はWebサイト(http://www.cairc.org)も開設し、今年は、新たに「ペットにやさしい不動産・管理会社リスト」も加えました。4月には集合住宅のペット飼育者と不動産関係者に向けた "犬や猫と暮らす集合住宅「飼い方読本」"、"犬や猫と暮らす集合住宅「経営管理サポート読本」" も刊行いたしました。今回の催しも人と動物が共生できる社会づくりの一環として取り組んだものです。正田陽一CAIRC会長はこの催しについて次のように紹介します。

私どもCAIRCは各種のテキストブックの配布やHPによる情報発信、また、ペット可集合住宅建設管理のためのシンポジウムなどさまざまな取り組みを行ってきました。これらの活動を通して人とペットが共生できる社会づくりをサポートしてまいりましたが、ペットオーナーの方々が抱える問題の多くは個別相談が不可欠なものもあるという実感を持っておりました。この電話相談室はそのような問題を抱える方々に今後の対応策を示唆できるアドバイスを行いたい、という意向から設けられたもので、今年は遠方の方にもかけていただけるようフリーダイヤルで対応させていただきました。昨年に比べると相談件数は減っていますが、テキスト配布、HP制作、シンポジウム開催で情報提供させていただいた結果と考えています。昨年以上に内容もより具体的で、『管理規約を小型犬のみOKから大型犬までOKに変えるには?』といったように、実際に規約改正のために動いたうえでの質問が増えました」

今回は、集合住宅における動物飼育を考える協議会、社団法人日本獣医師会にご後援をいただき、主催はコンパニオンアニマルリサーチが行っています。アドバイザーはペット政策研究所代表で、法律家の吉田眞澄先生、弁護士小林博孝先生、相川動物医療センター獣医師高倉はるか先生、東京大学大学院生命科学研究科加隈良枝先生、集合住宅管理組合センター代表理事島幸俊氏、常務理事 兼 事務局長有馬百江氏、集合住宅における動物飼育を考える協議会事務局長小暮富夫氏、(社)日本動物保護管理協会府馬一貴氏など専門家の方々です。


快適なコミュニティづくりを目指し
管理規約改正やよりよいしつけに対する質問が目立つ


CAIRCでは相談内容を相談者の居住地別、カテゴリー別に分類し、その傾向を調査しています。相談件数は計62件。居住地域別の被相談者の割合では首都圏が40%で、昨年より10%以上減少しています。つまり、首都圏以外の被相談者の割合が増加したわけですが、その要因として、フリーダイヤルを導入したこと、集合住宅とペットの問題への関心が全国に広がったことなどがあげられます。なかでも、大阪府の伸び方は顕著で、10ポイント増の、15%になっています。今後、大きな動きを見せる可能性があるといっていいでしょう。

なお、相談内容を項目ごとに分けてみると、【1】管理規約について(29%・昨年度25%) 【2】その他(16%・昨年度24%) 【3】しつけについて(13%・昨年度11%) 【3】飼育マナー(13%・昨年度14%) 【5】ペット飼育禁止集合住宅でペット飼育者がいて問題となっている(10%・昨年度14%) の順となっています。昨年度に比べると、増えているのが管理規約に関するご相談、しつけ、飼育マナーについてのご相談です。とくに、管理規約に対する質問は昨年より具体的で、すでに規約改正に向かって踏み出している方からのご相談が目立ちました。トイレのしつけや飼育マナーでのアドバイスを求める方が多かったのも、よりよいコミュニティづくりを目指したい、飼育マナーを向上したい、という方が増えた結果と考えられます。

集合住宅居住者にとって、トイレトレーニングは不可欠な課題
コマンドに合わせての排泄をしつけよう


今回の相談ではしつけのなかでも、トイレトレーニングについての質問が数多く寄せられました。成長してからのトイレトレーニングは決してかんたんではありませんが、訓練次第で覚えさせることは可能です。「戸建から集合住宅に転居したので、室内でトイレをできるようにしたい」、「生後8カ月の犬がトイレを覚えないがどうすればいいか」という質問には高倉先生がアドバイスしてくださいました。

「犬は朝起きてすぐ、昼寝の後、食事の後、遊んだ後などにトイレに行きたくなるようですから、その時間をねらってトイレに連れて行き、そわそわしてきたら『オシッコしようね』などサイン(コマンド)を出します。排泄したら、ほめたり、おやつを与えたりして、トイレから出してやります。サインを繰り返すことでその合図に合わせ、排泄できるようになります」

また、かなり定着してきたといっても、猫の完全室内飼育に抵抗のある人は少なくないのかもしれません。室内飼育に関する質問もありました。内容としては、飼っている猫をときどき屋外に連れ出すことについての是非を問うものでした。

「活動的な猫なので屋内だけではストレスになるから、ということでしたが、外にはむやみに出さないほうがトラブル回避のため、交通事故予防のためによいと思います。屋外に連れ出す場合は、リードをつけて散歩をしたり、きちんと飼い主がそばにいるべきです。室内のなかで高低差をつくり、遊び場などを工夫すれば、活動的な猫でも満足できる『場』をつくりだすことは可能です。ストレスをためないよう一緒によく遊ぶようにしてください、とアドバイスしました」(加隈先生)

ペット不可からペット可への規約改正は
管理組合に相談し、じっくり取り組もう


管理規約の問題は集合住宅でペット飼育を行う際の避けては通れないポイントです。今年は昨年に比べて「ペット可検討中」の方々からの問い合わせが多かったのも特徴です。「現在はペット禁止になっていてペット可にしたいのですが、その場合、どうすればいいでしょうか?」という質問には島氏がアドバイスされました。

「管理規約の改定には区分所有者、および議決権の4分の3以上の賛成が必要になってきます。まず、管理組合にペット飼育を検討する専門委員会の設置を要望します。検討した結果を理事会にあげ、それが総会提案になります。本規約を改正し、一つひとつのルールは飼養細則でつくっていきます。これと同時にペットクラブを設立し、ペットの飼い主で自主管理、規制を行うようにしましょう。この場合、飼育者の気持ちを代弁する役割が必要ですから、飼育者のなかから管理組合の理事に就任するのもいいでしょう。規約改正は管理組合との信頼関係が大切ですから、他の居住者からクレームが出ないようマナーの改善に努めること、急いで改正するのではなく、居住者が納得できるよう時間をかけて規約改正を行う必要があります」

マンション購入時には管理規約を確認し
ペット可かどうか見極めよう


マンション購入時、販売員側が「ペット飼育可」と言ったはずなのに、実際に住んでみると規約には「ペット不可」と書いてあった、というケースも数件あります。これは「危害を加えない動物は飼育可」というような「あいまい規約」を販売員側が都合よく解釈したり、管理規約を確認しないまま「飼っている方もいらっしゃいますよ」「見つからなければかまいませんよ」などと答えたため入居希望者が「ペット飼育可」と受けとめたことから生じた問題です。

この問題には吉田先生から「売買契約を結ぶ前に管理規約が示され、重要事項の説明が行われるので、そのときにきっちりと確認し、そこでも同じ説明がされるのであれば、それを覚書にしてもらうか、それがだめな場合には説明の内容を正確にメモに取っておきましょう。後にトラブルが生じたとき、デベロッパー側に責任を取らせやすいと思います。すでに、入居してしまった場合は、ペット可にするため規約改正などを働きかけていきます」とアドバイスがありました。ペットオーナーは、デベロッパー側の言葉を鵜呑みにするのではなく、マンション購入時に自分自身で管理規約を確認するよう努めたいものです。

子供のためにペットを飼う。心の育成には効果的
ただし、生き物を飼う責任や世話を続ける自覚を忘れずに


今回、子供のためにペットを飼いたいとおっしゃる方からご相談を受けました。「ペットは子供の心の育成に効果があると聞きました。子供が情緒不安定なので、犬を飼いたいと思います」

このご相談にはCAIRCスタッフが応対し、子どもにとってペットが果たす役割の大きさや、ペットを子ども任せにしないで大人が責任を持って飼う必要性について説明しました。また、この方にはCAIRC Webサイトの紹介、その他、子供への効用について資料を送らせていただきました。ただ、子供にせがまれて飼ったものの、世話ができなくなって困っているという相談も寄せられました。子供が動物から何かを学ぶことができるかどうかは大人の担う役割が大きく、大人がお手本を見せることによって教えていかなければなりません。最終的には大人が責任を持って世話を行い、きちんとしつけることが大切です。

賃貸アパートをペット不可からペット可へ
既存の入居者への対応がポイント


不動産管理会社の方から「賃貸アパートをペット可にしたいが、法律的にはどのように対応すればいいでしょうか?」というご相談がありました。このご相談には吉田先生がアドバイスしてくださいました。「既存の入居者はこれまで『ペット禁止』という条件で住まわれていたわけですから、変更の連絡、通知、説明を十分に行います。既入居者の了承を得たうえ、新規の契約は契約書を変更すれば大丈夫です。既入居者からは承諾書を取るか、その人がペットを飼いたいのであれば、契約書を差しかえます。既入居者との契約全般については更新時に内容変更を行います」

既存の入居者とのあいだでトラブルになる可能性もあるので、ペット飼育の規約をつくるなど、できる限りていねいな対応が必要といえるでしょう。

イベント開催などでペットクラブの存在意義をアピールし
非飼い主との交流も心がけよう


集合住宅でペットを飼うとき、ペットクラブは快適なコミュニティづくりをサポートしてくれる存在。ペットクラブをつくることで正しい飼育マナーを広めていけますし、トラブルの窓口にもなってもらえるので非飼い主の方にも安心です。ペットクラブはあるものの、その運営の方法、会員に積極的に参加してもらうにはどうすればよいか、というご相談にはCAIRCスタッフがアドバイスさせていただきました。

「ペットクラブの会員はほとんど犬の飼い主。しかし、半数あまりの犬の飼い主は会の活動に無関心で非協力的。共有部で犬の尿などのトラブルも出ているということです。このご相談には、猫の飼い主に了承を得たうえで、犬のしつけ教室などのイベントを開催し、多くの会員が参加できる活動を行うことをアドバイスしました。また、このとき非飼い主へのイベント参加などを呼びかけてみるのも交流が図れていいと思います」

ペットにはどんな設備が必要か?
大掛かりな設備よりそれぞれの対応で


ペット可検討中のデペロッパーの方々からは必要な設備等での問い合わせがありました。犬や猫は前のペットの匂いが気になるものかという質問、内装、グルーミングルームは設置するべきかという質問もありました。このご相談には高倉先生が獣医師の立場からペットにとってどんな設備が有効かアドバイスしてくださいました。

「匂い対策は壁紙の交換、匂いのしみこみにくい床材使用、尿がついたとき、すぐに酵素系の洗剤で洗浄すれば大丈夫です。ペットがストレスを感じるとすれば、匂いより他の要因の可能性のほうが大きいと思います。また、床材は滑らず掃除しやすいもの、壁紙は匂いのしみつきにくいものを選びます。空気清浄機、ペットドア、ゲートなどもあると便利です。グルーミングルームに関してはとくに必要ないでしょう。個々の部屋のバスルームでも細かい網をつければOKです。多くの場合、ペット用に大掛かりな設備を準備する必要はありません。ちょっとした工夫をアドバイスしたり、ソフト面の対応をていねいに行うことが大切です」

ペットが嫌いな人もいるのがコミュニティ
飼育マナーを守り、迷惑をかけない飼い方が大原則


小鳥以外ペット飼育禁止の集合住宅に住む非飼い主の方の悩みも寄せられました。「上階の部屋で犬を飼っています。飼い主が毎夜11時半頃帰宅し、そのたびに小型犬がはしゃぐらしくその音で迷惑しています。どうすればいいでしょうか?動物飼育は反対ではありませんが、迷惑行為は許せません」というご相談には、小暮氏がアドバイスされました。

「総会でペット禁止であることを発言し、規約を守るよう注意しましょう。飼育を制限する必要がないという意見が多ければ規約改正も検討するように投げかけてもいいでしょう。もちろん、飼育OKになったとしても近隣に迷惑をかけないことが基本なので、飼い方をペット飼養細則などでルール化する必要があります」

ペットの健康にも気を使おう。ペットのアレルギーも
アレルゲンを突き止めて、それぞれの対応を


アレルギーをもったペットも増えています。「アレルゲンは不明ですが、4日ごとに注射を打って、かゆみをとめています。薬を飲んでいましたし、アレルギー食にしていますが、効果はありません」というペットの健康に関するご相談には高倉先生がアドバイスを行いました。「動物病院でアレルゲン検査をしてください。食べ物のアレルギーなら処方食も効果的ですが、原因が分からないと対処法も分かりません。動物の皮膚科もあるので、機会があれば検査してみるといいと思います」

アレルギーの原因は、花粉、ハウスダスト、ダニ、食べ物などさまざま。アレルゲンを特定して、対応することが大切です。集合住宅では部屋の湿気がアレルギーの原因を増やす要因になっていることもあります。部屋を清潔にし、除湿機などを利用し、ペットが健康に過ごせる環境を整えるよう心がけましょう。


今回の催しでは、ペットオーナー、管理組合、デベロッパーの方々、非ペット飼育者の皆さんがそれぞれに集合住宅とペットの問題と取り組み、少しずつ広がりを見せていることがわかりました。今、新規集合住宅の中にはペット可物件が徐々に増えています。既存の集合住宅も「ペット可」に移行するケースが出てきました。集合住宅において、人間とペットが快適に暮らせる環境づくりは確実に進んでいると言っていいでしょう。ただ、集合住宅は立場の異なる人々がともに暮らすコミュニティ。動物を家族の一員と感じている方もいれば、動物が好きではない、という方もいるなかで、それぞれのライフスタイル、考え方を認め合いながら、上手に共生していくことが望まれます。ペットオーナーは、正しい飼育マナーを身につけ、非飼育者の方々の意見に耳を傾け、誠実に対応していくことが大切です。それが集合住宅で動物を飼育する責任と言えるでしょう。
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