Letter from CAIRC
2004.6 Vol.8 No.1

急速に変化している
集合住宅でのペット飼育実態調査を実施

ペット可集合住宅が増える中、
ペット飼育に関する情報を求める声もより広範に

人間とコンパニオンアニマルとの共生をめざす「コンパニオンアニマル リサーチ」が1997年設立以来、取り組んでいる活動テーマの一つに「集合住宅とペット」があります。集合住宅が過半数を超える都市部で、人とペットが共生していくためにはどうしたらよいのか―。その問いの解決に向けて、私たちはこれまでに飼い主、賃貸住宅オーナーをそれぞれ対象とした冊子を発行したり、ディベロッパーや管理会社など集合住宅の経営や管理に関わる人を対象としたシンポジウムを開催したり、また個別の相談に専門家がアドバイスを行う電話相談室「集合住宅とペット110番」を開設するなど、さまざまな活動を行ってきました。

最近ではペット可集合住宅が増え、以前と比べると環境は整いつつありますが、一方で、「ペット可集合住宅でのペットクラブの運営方法」、「ペット飼育細則について」等ペット可集合住宅での新たな情報を求める声も多くなってきました。そこで、CAIRCでは「集合住宅とペット」を取り巻く環境の急速な変化とその実態をとらえるため、アンケート調査を行いました。



2000年以降、管理規約改正が加速

調査は、ペット飼育のテーマに関心のある集合住宅に住む管理組合役員またはペットクラブ役員など対象に、2004年4月に実施しました。アンケートの有効回答270のうち、ペット(犬・猫)の飼育が可能なペット可集合住宅は159、ペット(犬・猫)の飼育が認められていないペット不可集合住宅は111でした。

まず築年数別にペット可集合住宅かどうかを調べたところ、築年数が浅いマンションほどペット飼育ができるところが多いという結果が出ました。ここ数年、市場のニーズに応えるため、「ペット可」を打ち出しはじめた集合住宅も増えており、不動産経済研究所調べ(2003年)によると、首都圏の新築分譲マンションの場合、約半分がはじめからペット飼育可物件となっています。アンケート調査では築年数5年以内のマンションではペット可が全体の77%、築年数6〜10年は60%、11〜20年は58%、21年以上のマンションでは47%でした。
今回の調査結果から実に興味深いデータが出てきました。それは入居後の管理規約改正の動きです。ペット可集合住宅のうち、最初から規約がペット可であったものは全体でみるとわずか3割弱。残り約5割は入居後にペットが飼育できるよう管理規約の改正を行っており、他2割強に関してはペットに関する規約がないか、「危害を加える動物の飼育を禁じる」といういわゆる「あいまい規約」が存在しており、解釈として犬・猫飼育を認めているケースでした。

下のグラフを見てもわかるとおり、規約改正の動きは2000年以降、大きく増加しています。
更に、規約改正を行ったマンションの約8割以上がペット飼育に関する住民アンケート調査を実施しており、住民全員の意見を尊重しながら改正の手続きを踏んでいることが成功の秘訣のようです。


住民同士のコミュニケーション機会が多い
ペット可集合住宅


さて、これらペット可マンションのうち8割が、ペット飼育に関する細則を設けています。主な細則項目は、(1)届け出制度 (2)屋内飼育 (3)頭数制限 (4)ペットクラブ(飼育者の会)加入 (5)大きさ制限 (6)予防接種。ただ「好き勝手に飼う」ではなく、同じマンションの住民の中には動物が嫌いな人もいるということを前提にお互いが納得できるルールを作ろうというところに、細則を設ける大きな意義がみられます。

ここで細則の中にある「ペットクラブ(飼育者の会)」について注目してみましょう。ペット可集合住宅のうち、約60%がペットクラブがあると答えています。また、ペット不可のマンションでも約20%はペットクラブがあり、飼育者同士がコミュニケーションを図っていました。その活動内容は、ペット可、不可を問わず、苦情の窓口以外にもマナー向上やペットへのしつけに関する啓発活動を積極的に行っています。ペット可集合住宅のペットクラブ活動の内訳をみると、苦情・相談窓口(34%)しつけ教室や勉強会(18%)、会報作成(18%)、掃除(14.0%)、情報交換、マンションの見回り、非飼育者との交流を含むその他(15%)となっていました。ペット不可集合住宅のペットクラブの場合、こうした活動のほかに、ペット規約改正への支援活動を行っているところもみられました。
ペット可とペット不可のマンション住民のコミュニケーション機会を比較すると、全住民間で集まる機会があると答えたのはペット可が73%に対してペット不可では63%と、10%の開きがありました。集まる頻度でみても、2、3ヶ月に1回以上の頻度と答えたのは、ペット可25%に対してペット不可では20%以下と、ペット飼育を認めている集合住宅の方が全住民で顔を会わせる機会が多いという結果になりました。これは、CAIRCとしてはうれしい結果です。ペット飼育を通じて日頃のコミュニケーションが密になったり、規約改正という一つのテーマに住民全員で向き合った経験が、コミュニケーションを深める一つのきっかけになったのではないかと推測できるからです。

更にペット専用設備に関する質問も行いましたが、ペット可集合住宅の90%は「専用設備なし」という回答。設備がなくても規約でペット飼育可にすることでペットと共生をしているところが圧倒的でした。ペット用の専用設備があると答えた1割弱の中で、もっとも多かった設備は足洗い場でした。


「ペットクラブ」を中心とした人の輪の広がりで
コミュニティの質を上げることも


ペットと暮らせるマンションは新築分譲住宅を中心に増えていますが、2003年度の国土交通省住宅局の調査ではマンション居住者間の3大トラブルの一つにペット飼育が含まれており、まだまだ課題が残されていることを示唆しています。集合住宅は動物が好きな人も嫌いな人も住むコミュニティです。ペット可集合住宅だからといって飼い主が周囲への気遣いを忘れてしまっては、規約をペット不可に戻す動きが出ないとも限りません。やはり住民同士が気持ちよく暮らすためには、ペットを飼っていない人も共感できるようなルール作りを行い、正しい飼育マナーを広めることが大切なのではないでしょうか。その意味では、「ペットクラブ(飼育者の会)」の役割はとても重要です。アンケートでも多くのペットクラブが飼育者同士でまずマナー向上を考え、さらにはペットを飼っていない住民との交流もめざしていました。日頃のおつきあいがあれば、何かペットに関する問題が持ち上がったとしても解決をめざして前向きな協議ができるというものです。

マンション管理に関する相談を行っているNPO法人 集合住宅管理組合センター 代表理事 島幸俊氏も今回の調査より明らかになった集合住宅の実態について「ペット飼育可能な新しいマンションが多くなると共に、規約改正によって飼育可能としたマンションが増加したことは望ましいことです。その結果、飼い主の会を中心にきっかけを作り、住民間のコミュニケーションを円滑にし、コミュニティの質を上げることが可能だからです」と分析しています。
集合住宅において人とペットとの共生を考えることは、また隣人との共生を円滑にすることにもつながっていくのです。

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