Letter from CAIRC
2005.6 Vol.9 No.2

ペットをもっと知ろう、犬種について考えよう
CAIRC Webに新コンテンツ
「あなたとペットのたのしい暮らし」登場!


新コンテンツには、それぞれのライフスタイルに
適した犬種がわかる「ぴったりの犬選び」も


コンパニオンアニマル リサーチ(以下CAIRC)では当団体のWebサイトに新しいコンテンツ「あなたとペットのたのしい暮らし」を追加いたしました。このコンテンツはペットを飼う前に考えたい事項や最近のペット飼育事情などの情報をはじめ、それぞれのライフスタイルに適した犬種を選べる「ぴったりの犬種をみつけよう〜Select A Dog」まで、より楽しくペットと過ごすための情報を満載しています。


楽しいペットとの暮らしは「飼う前」に
ちょっと考える、ちょっと学ぶ、で大きく違う


ペットを飼育する人が増えています。テレビCMや雑誌の表紙でも犬や猫のかわいい姿を見ることが少なくありません。犬を連れて散歩を楽しむ人の姿もよく見かけます。ペット飼育ができる集合住宅も増え、犬や猫を飼育する人の多くが「ペットはかけがえのない家族の一員」とみなすようになりました。

ただ、ペットとの楽しい暮らしは動物を飼うとそのまま与えられるものではありません。しつけに関する意識、周囲の人に対する気配り、飼育に関する知識…など、社会の中で動物を飼育するという自覚が不可欠です。飼う前に犬や猫に対する知識を身につけたり、自分自身に「本当に飼えるのか?」と問いかけてみたり…自分自身のライフスタイルを考えてみる必要もあるでしょう。いっしょに散歩を楽しみたいなら犬のほうが適している、ひとり暮らしで留守がちならば猫のほうが適している、というようにそれぞれのライフスタイルによって合うペットも違ってきます。とくに、犬は、その品種(犬種)が500以上とも言われ、体重わずか1kgのチワワから100kg近いセントバーナードまでさまざま。一口に犬といっても大きさや外見、行動特性や性質も大きく異なります。

今回のコンテンツ「あなたとペットのたのしい暮らし」では、「飼う前」に焦点を当て、ペットと暮らし始める前に知っておきたい情報を掲載いたしました。犬を飼いたいという方にはライフスタイルや住環境によって「あなたにぴったりの犬種」を選び出すコンテンツも用意してあります。飼い主それぞれのライフスタイルに最適な犬種ベスト3を紹介し、それぞれの犬種の特徴をまとめた情報も掲載しています。


飼い主のライフスタイルに適した犬種選びで
ペットとの暮らしがもっと楽しく、豊かになる


ペットの飼い方はこの10年で大きく変わりました。犬の屋内飼育率は約60%と過半数を占めるようになり、猫の完全屋内飼育率も70%に達しています。集合住宅でペットを飼うためのルールづくりやマナーの大切さも多くの人々に知られるようになってきました。しかし、私たち日本人が動物を飼う前に考えなければならない事項についてはあまり追求されてこなかったように思います。5年後、15年後のライフスタイルを想定したり、家族構成を考えてみたりするだけで、自ずと適したペットは絞られてきます。とくに、犬を飼う際には、飼いたいと思っている犬種について調べると、多くの情報を得ることができます。飼う前の準備として必須事項と考えてもいいでしょう。
「2年前、娘が『子どもの頃からずっと飼いたかった』と連れてきたのがミニチュアダックスフンドのミイちゃん。最初は他の犬種を飼おうとしていたのですが、気が変わって決めたようです。でも、後で調べたら最初に飼おうとしていた犬種は無駄吠えが多いと聞きました。集合住宅に住んでいますから、そんな犬種だったら今のようなハッピーな状態ではいられなかったと思います。世話が大変そうと、あまり飼うことを賛成していなかった私も今はもうメロメロ(笑)。ミイちゃんは、犬の美容室で他の犬が吠えて騒いでいるようなときでも静かにじっとしています。おとなしさ、大きさからいってもミニチュアダックスフンドは集合住宅にはぴったりでした」

と話すのは、東京都品川区に住む大石晶子さん。これまでペットを飼ったことがなかったため、ほとんど情報がないまま飼育をスタートした大石さんですが、飼い始めてからは本、インターネット、ダックスフンドを飼う友人などから情報を収集。「最初は残飯を与えてもいいのかと思っていましたが、調べてみると人間と同じものを食べていたのでは塩分が強すぎる。牛乳を飲ませちゃいけない、ネギを食べさせちゃいけない、ダックスフンドにはこんなドッグフードがいい、といろいろ教わりました。また、獣医の先生から脱臼を起こしやすいと聞いたので、なるべく飛び降りたりさせないようにしています。あとで考えてみると、うちはたまたまぴったりな犬種を選んでラッキーだったけど、違う犬種だったらちゃんと飼えたかなぁと不安になりますね。集合住宅に住んでいますから、無駄吠えが多いと近所にも迷惑をかけたと思いますし、共働きなので散歩時間もそんなにたくさんとれない…。犬種について十分考慮して飼うことがいかに大切であるか、今ならよくわかります」

一方、犬種を第一に考えてトイプードルのミエルちゃんを飼い始めたのが京都府の田義巳さん。「いくつか候補をしぼったんですが、離れて住んでいる娘にも相談してトイプードルに。最初はジャックラッセルテリアも考えましたが、調べてみるとかなり活動的な性質だとわかりました。5年後、10年後を考えると、老後も意識する年代になるので自分たちにとって活動的すぎる犬や大型犬は対応ができないかもしれない。それに比べて、トイプードルは、私たちの暮らしに合っていると思いました。実は、以前プードルを飼ったことがあるので、性質がわかっていたのが選んだいちばんの理由です。賢くて、従順な犬種ですし、抜け毛が少ないのでアレルギーをもっているうちの家族も心配なし。飼って2年半になりますが、人なつっこくて愛くるしいうえ、手がかからない。家族中が大満足しています。慎重に犬種選びをして正解でしたね」

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飼育の際は、外見や大きさ以上に
犬種のもつ行動特性や性質を把握することが大切


「人間は1万年以上前から自分たちの要求や目的に合わせ犬の品種改良を進めてきました。犬種ごとにそれぞれ外見や大きさも違いますが、より大きく異なっているのが行動特性や性質です。欧米では猟犬、牧羊犬など生活の一部として犬を使ってきたので、犬種のもつ特性を多くの人々が認識しています。一方、動物観の異なるアジアでは犬の品種改良を積極的に進めてきませんでした。そのため、日本人は犬種というと、外見や大きさの違いでとらえがちですが、行動特性や性質の違いこそが犬種ごとの大きな特徴です。飼育の際にも犬種によって異なる行動特性や性質を知っておきたいものです」

とアドバイスするのは東京大学大学院農学生命科学研究科 森裕司教授。たとえば、ボーダー・コリー、シェットランド・シープドッグなど牧羊犬の仲間は、広大な土地で長時間羊を移動させるために改良されたタフな犬種。一般的な「犬の散歩」のイメージとは違い、毎日、長い時間、ハードな運動が必要になってきます。また、外見が愛らしいヨークシャ・テリアやジャック・ラッセル・テリアなどテリアの仲間はアナグマやネズミなどを吠えて追い込むために改良された、勇敢で活動的な犬種。「吠えること」が行動特性のひとつなので、きちんとしつけを施すという厳格な対応が必要になります。
「走る、吠える、闘う、獲物を追う…など、それぞれもっていた行動特性や能力をより向上させて犬種がつくられました。ですから、同じイヌ科の動物といっても犬種間の違いは大きく、イヌという大きなカテゴリーで同じように飼育するのではなく、それぞれの犬種に合った対応をとることが望ましいでしょう」(森先生)

ある調査によると、犬種を考慮した対応の必要性について、獣医師の9割が「飼い主にもっと考えてほしい」と答えています。ところが、犬種ごとの対応の必要性を感じている飼い主は約1割にしかならず、残念なことに、この認識はまだほとんど定着していないことが分かります。しかし、犬種ごとに対応することの重要性は犬の行動特性や性質を把握できるだけではありません。
「品種改良によってさまざまな犬種がつくられたため、犬は体格や骨格によって特有の疾患が生じることがあります。たとえば、ダックスフンドは椎間板ヘルニアになりやすい体質をもち、シーズーは目の病気になりやすいので注意が必要です。また、小型犬は膝や関節のトラブルを起こしやすい傾向があります。いずれもシニア期を迎える七歳前後に発症する可能性があるので、若いうちからちゃんと予防しておく必要があります。信頼できる獣医師に相談しながら、運動、食事、生活習慣なども犬種ごとに対応するのが適切だといえます」(森先生)


人間の尺度で考えるのではなく、犬や猫にとって
ハッピーかどうか、正しい知識を身に付けよう


ペットの寿命が延びるなか、肥満や生活習慣病で苦しむ犬や猫も増加の傾向にあります。コミュニティの中で起きる犬や猫のトラブルは、ペットのストレスが原因になっていることも少なくありません。飼い主がペットを大切に飼育しているつもりでも、ペットがストレスを抱えるのでは本当のたのしい暮らしとはいえません。
「日本人はペットをかわいがると擬人化してしまう傾向があります。欧米では、ペットはペット、と距離をおいて冷静にとらえる人が多いけれど、日本人は自分の子供のように扱いがち。たとえば、分離不安で無駄吠えのある犬に『一頭で寂しいだろうから、もう一頭飼ってあげよう』という対応をすることがあるようです。その状態で、もう一頭犬を加えれば、愛情を要求している犬が混乱してしまうのでいい結果にはつながりません。きちんと獣医師に相談し、人間の尺度だけで犬や猫をとらえないことが大切です。もう一頭飼いたい場合は、タイミング、それぞれ独立したスペース、犬同士の順位に気をつける等、慎重な配慮が必要です。また、10年から20年間、付き合う相手ですから、飼い主の暮らしと合わなければお互いに幸せとはいえません。飼育する前に、積極的に情報を集めてください。公園に行って飼いたいと思っている犬種の飼い主に話を聞くだけでもリアルな情報を得ることが出来ます。事情を話してリードを持たせてもらえばその犬がどれくらいの力でリードを引くかも分かるはずです」(森先生)

言葉が話せない犬や猫だから、飼う前にできるだけペットの情報を仕入れ、正しい知識を身につけたいもの。正しい知識で自分自身のライフスタイルと照らし合わせると、あなたにぴったりのペットがわかります。より楽しい、より豊かなライフスタイルを築くために、飼い主になる前に「ペットとのたのしい暮らし」について考えてみましょう。


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